洞窟は共同墓地?弔いの儀式?高い知能と理性を備えていた証拠?
化石人骨があった地下空洞に他の動物の骨がほとんどなかった。地下空洞に辿り着くには、曲がりくねった真っ暗な洞窟を約100m進み、さらに狭く長い穴をすり抜けるように降りなければならない。地上から簡単に行ける場所ではない。
なぜ奥深い洞窟に15体もの大量の人骨が集まったのだろう?
バーガー氏は「ホモ・ナレディは、火を使って100mの洞窟を照らしながら仲間の亡骸を運び、狭くて長い穴に埋葬していたのではないか?自らを他の動物と異なる存在として、死を認識していたのかもしれない。ホモ・ナレディは、人類の起源や進化の定説を覆す可能性がある」と期待を込めている。
だが、確認されている最も古い埋葬例は、ネアンデルタール人のおよそ10万年前という。死者を埋葬するのは、現生人類だけの習慣だ。多くの古人類学者は、ゴリラと同程度の脳しか持たない種が、たいまつで狭い通路を照らしながら、遺骨を埋葬したり、弔いの儀式を行ったり、死を理解したり、現世人類と同じような理知的な行動はとれないだろうと推定する。
真相は分からない。発掘を再開する計画はないが、発見された化石人骨は、広さ1平米ほどの限られた区画から発掘されているので、人骨は数百個〜数千個はまだ残されている可能性はある。
バーガー氏の研究チームは、DNA鑑定など複数の解析法を駆使して、化石人骨の年代測定に全力で取り組んでいるところだ。近い将来、新たな発表があるだろう。
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。