DNA鑑定秘話 第3回

皇帝ナポレオンの死因の謎に迫る!胃がんか?ヒ素による毒殺か?

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 ナポレオンは、胃壁内部に浸潤する典型的な潰瘍性胃ガンで、転移はなかった。肝臓は肥大しているが、脂肪肝ではない。ヒ素中毒の症状と考えられる腹痛などは、胃ガンの症状と矛盾しない。このような理由から、ヒ素毒殺説に反対する学者たちは、胃ガンの合併症の消化管出血が死因、つまりカロメルの過剰な服用は医療事故とみなし、暗殺ではないと否定している。

 2001年、ストラスブール法医学研究所のパスカル・クンツ博士らは、ナポレオンの遺髪のヒ素濃度を再鑑定。通常の7倍〜38倍の高濃度のヒ素を検出し、ナポレオンが生前にヒ素中毒だったと発表した。

 2002年、パリ警視庁毒物学研究所のリコルデル所長らは、セントヘレナ島への流刑前と死後のナポレオンの遺髪を詳しく調査し、どの試料からも15~100 ppmの高濃度のヒ素を検出。つまり、流刑後にナポレオンが高濃度のヒ素を盛られたのではなく、流刑前から環境由来のヒ素を体内に蓄積していた恐れがある。ただ、検査した毛髪がナポレオンのものかは、未確認だ。

 当時は、化粧品、整髪料、壁紙、絵具、塗料などにヒ素が頻繁に使われたので、無意識のうちにヒ素中毒になるリスクがあった。ナポレオン邸には、絵具で描いた絵画が飾られ、ワインの樽を洗うためにもヒ素が使われていた。ワイン好きなナポレオンが、日常的に環境由来の慢性ヒ素中毒に罹っていた可能性はある。

 ナポレオンの柩は、パリのアンヴァリッド(国立廃兵院)の地下墓所に安置されている。コトの真偽を明らかにするために、遺体のDNA鑑定はできないのだろうか? DNA鑑定すれば、死因が胃ガンか、ヒ素かを判断できるかもしれない。しかし、フランス政府は、数十年間にわたって遺体の発掘を許可していない。ナポレオンの死因の真相は、暗礁に乗り上げたままだ――。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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