「THE WINDS OF GOD」制作発表記者会見 YouTubeより
俳優の今井雅之は5月1日から全国公演を予定していた舞台「THE WINDS OF GOD」(主演)を降板することになったと自らのブログで報告。本人のコメントは「昨年大腸を患い検査を行ったところ大腸がんであることがわかり、緊急手術を行いました。現在は抗がん剤治療を行っており、開腹手術、また抗がん剤による副作用等の影響もあり、舞台上での発声に限界があり、お客様に完璧な状態で舞台をお観せすることが出来ません」というものだった。
今年2月の会見では「昨年末に大病を患い、一時は"余命3日"とまで診断され、腸の緊急手術を行った」「「大腸が腐って、腸閉塞を起こしちゃってた」などと語り、約1カ月の入院を経て、現在はリハビリ状態であると告白していたが、ここに来て大腸がんの治療中であることを明らかにした。
大腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなるが、もともと管腔が広い臓器であるため、がんができた部位によってはなかなか症状が出てこない。進行がんになれば、便柱の細小化、便秘、下血、血便といった症状が出てくるが、定期的な検査を受けていなければ、見逃されることも多い。
今井は昨年の段階で、「2カ月くらい前から体調が芳しくなく、都内の総合病院に行っていた」と報告。はじめ病院では「腸の軽い風邪だと」言われ、その後も3回ほど病院に行ったがいずれも「腸の風邪です」と診断されたとのこと。その後CTスキャンでの検査でやっとがんが発見されたのだろう。
進行が遅いがんだからこそ早期発見が重要
大腸がんは約96%が腺がんで分化度の高いがん、つまり比較的おとなしい性質のがん多いという特徴があるため、ステージ I、IIの5年生存率は80%以上で、他の臓器のがんと比べると予後がいい。内視鏡的切除などで完全に取りきることのできる早期に発見されれば、予後がさほど悪くない。生存の可能性が高いがんなのだ。
しかしながら、現在のところ、日本で大腸がんでの死亡数は、女性で1位、男性で3位、となっている(2013年、がん情報サービス)。さらに患者数が急増する傾向にあり、近いうちにがんで死亡する人の死因の1位になるとの見方が強い。ステージ I、IIなどの早期がんで5年生存率が他の臓器のがんと比較して高いにも関わらずこの死亡数の多さはなにか?
答えとしてまず挙げられるのが日本での大腸がん検診受診率の低さだ。2007年の国民生活基礎調査では男性27.5%、女性22.7%。ほぼ同じ時期のアメリカ52.1%、韓国34.1%と比べるとその低さが分かる。とはいえ、国を挙げての受診の推進の成果で、2013年には男性41.4%、女性34.5%まで伸びてきた。
しかし、大腸がん検診といえば、まず便潜血検査だが、あくまでも便に含まれる血液の有無を検出しているだけで、便潜血陰性の大腸がんがある以上、少しでも大腸がんを疑う症状がある場合は、この検査を受けても不安は残る。大腸ポリープや早期大腸がんでは、便潜血は陽性にはならない場合が少なくないのだ。
より早く見つけ、処置をするのであれば大腸内視鏡検査だ。内視鏡検査であれば、粘膜を直接観察でき、早期のがんはほとんど見つかると言われる。細胞を直接調べるための生検も容易であり、内視鏡的粘膜切除術でより早期のがんの治療が可能だ。最近では機器の改良が進むと同時に、苦しくない検査方法として知られる「水浸法」なども広がりつつある。どうしても内視鏡に抵抗があるのであれば、最近はマルチスライスCTでの検査が注目されている。
いずれにしても、早期診断が死亡率の低下に最も貢献する代表的ながんが大腸がんである。ほぼ"定期的な検査イコール生存"と言えることを知っておきたい。
(文=編集部)