インタビュー 「介護離職」を食い止める! 第2回 NPO法人 介護者サポートネットワークセンター アラジン理事長  牧野史子

最初につまずくと修正しづらい介護~その 「入り口」を間違えないために

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"アラジン"の運営するケアラーズカフェ

 上司や部下だけでなく取引先からも人望の厚かった有能な社員が、退社しなくてはならなかった理由は親の介護だった――。

 いまビジネスの世界で問題になりつつある「介護による離職」。これを食い止めるにはどうしたらよいのか? 介護者の支援事業を行うNPO法人「介護者サポートネットワークセンター アラジン」の牧野史子理事長に話を聞く。

 中高年も若い世代も、なぜ離職に至るのだろう。その家庭環境を見てみると、中高年は子どもが仕事や家庭をもって独立していく年齢であるため、家の中には夫婦2人、あるいは夫婦プラス年老いた親がいるだけという状況が一般的だ。また老親と独身の子どもの2人暮らしというケースも多い。

 若い世代は少子化のあおりを受けてきょうだいの数が少ないのが特徴だ。一人っ子も決して珍しくない。

 こんな環境で配偶者や親に万が一のことが起きたら、介護の負担は残された配偶者や子どもに重くのしかかってくる。医師との面談、通院の付き添い、各種手続き、そして実際の介助など、代わってくれる人がいないから仕事を休んで自分がやるしかない。社内で肩身の狭い思いをすることになる。また、男性や若い人には家事の経験がない人もいて、身体介助やおむつ替えといった介護の作業に加え、掃除に洗濯、食事の用意などが非常に負担に感じられる。こうした日々の精神的、物理的負担が積み重なり、遂に離職へと向かうのだ。

離職を防ぐコツは"地域の資源"を見つける

 

 牧野史子理事長は、地域とのつながりの欠如も離職の原因の一つになると指摘する。

 「男性や若い人の特徴は地域に足場がないことです。女性は育児などを通して地域とのつながりができますが、それがない男性と若い人は、困ったときどんな援助が受けられるのか、誰を頼ればいいのかわからない。そもそも頼ってもいいのだということを知りません」

 「それで次第に一人で悩みを抱え込むようになるのです。大切なのは介護に悩む人たちを、どうやって適切な支援に導くかということです。いわゆる『入り口問題』といわれるものです」

 ではどんな『入り口』があるのだろう。一つは地域の行政だ。役所に問い合わせるとだいたい地域に設置された地域包括支援センターを紹介され、保健師、社会福祉士、主任ケアマネージャーといった分野別の専門家が、支援システム作りの相談にのってくれる。あるいは民間の組織である社会福祉協議会を紹介されることもあるだろう。しかし、通り一遍の答えしかもらえないという声もある。

 もう一つの入り口は、ケアラーズカフェや家族の会といった民間の支援組織である。

「実は介護する人たちは、自分が何に悩んでいるのか、何を相談していいのかわからないという人がほとんどなのです。支援制度を学ぶことも大切ですが、一番大事なのは解決すべき問題を洗い出し、何から手をつけていけばいいのか優先順位をつけることです」

「そして、そのための情報を得られるのが、同じような経験を重ねた人が集まるケアラーズカフェや家族の会なのです」

 介護離職を防ぐコツは地域行政の支援制度に加え、ケアラーズカフェや家族の会といった"地域の資源"を見つけること。介護に直面した際は、ネットで検索するなりして家族会などを見つけ出し、思い切って飛び込んでみることが近道といえるだろう。

NPO法人 介護者サポートネットワークセンター アラジン
*アラジン「心のオアシス」(電話相談)専用ダイアル/03-5368-0747(毎週木曜 午前10:30~午後3:00)

牧野史子(まきの・ふみこ)

介護者サポートネットワークセンター アラジン代表理事。千葉大学教育学部卒業後、小学校教員を経て、阪神大震災の際は仮設住宅高齢者支援活動に携わる。2001年に東京で介護者の孤立に取り組む「介護者サポートネットワークセンター アラジン」を設立。このほか、NOP法人若年認知症サポートセンター理事、一般社団法人 日本ケアラー連盟代表理事、市民福祉団体全国協議会常務理事も務める。

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