【病気の知識】

アルコール性肝障害

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どんな病気

 肝臓は1kg以上もある人体最大の実質臓器で右上腹部に位置します。肝臓は門脈と肝動脈の2つの血管系から血液が流入します。食道、胃腸を流れた血液は門脈に集められいったん肝臓を通過してから全身に循環します。
 
 肝臓の主な働きは食物中の栄養素を門脈を通じて肝細胞の中に取り込み、身体に必要な成分に造り替えることです。余分な栄養は肝細胞の中に貯蔵して、必要な時にはそれを適宜エネルギーに変える作業も行います。そのような代謝の過程で生じた廃棄物および体に入り込んだ有害物質の処理を効率に行う機能も備えています。肝臓に対して有害に作用する可能性のある物質の代表がアルコールです。

 アルコールを長期(通常5年以上)大量に摂取することにより、成立するのがアルコール性肝障害です。その発生の機序がいくつか想定されています。アルコール代謝の過程で生じるアセトアルデヒドやフリーラジカル、低酸素状態などの関与が指摘されていますが、遺伝的要素も強く、同じように飲酒を続けていても肝機能の悪化を認めない方も多くみられます。
 
 アルコールに強い弱いも遺伝が関係しています。それはアルコールやアセトアルデヒドを代謝する酵素の強弱が遺伝的に規定されているからです。
 
 アルコールによる肝臓病には4つのパターンがあります。それは「アルコール性脂肪肝」「アルコール性肝炎」「アルコール性肝線維症」「アルコール性肝硬変症」です。

 アルコール性脂肪肝はアルコール性肝障害の初期の病変で、アルコールが肝臓における中性脂肪の合成を高めるためにおこります。つまみをとりすぎて栄養過剰になると、肥満による脂肪肝も加味され、さらに脂肪肝が悪化しますが、脂肪肝はお酒をやめることにより改善します。
 
 アルコール性肝炎は普段大酒を飲む人が、特に飲酒量が増した時などに出現します。大量のアルコールの摂取により肝細胞は破壊され、GOT、GPTが著しく上昇します。

 一般に、アルコール性肝障害においてはGOT、GPTの上昇に加えγ-GTPが上がるのが特徴です。そして、GOTがGPTより高くなるパターンをとる場合が多くみられます。

 アルコール性肝炎の肝臓の組織を調べると肝臓の組織中には白血球の1種の好中球が浸潤し、肝細胞は風船のように腫れてきます。肝臓全体も腫れてきます。重症例では黄疸が出たり、腹水がたまったり、意識障害をきたしたりして死亡することもあります。
 
 日本ではアルコール性肝線維症という病態の患者さんが多く見られますが、アルコールとその代謝産物であるアセトアルデヒドは肝臓に線維を増やす作用があるからです。全身倦怠感や食欲不振を訴えることもありますが、概して無症状の患者さんが多いようです。

 以上述べた、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝線維症の3つはお酒をやめることにより改善していくことが期待できる病態です。しかし、この状態になってもさらに大量の飲酒を続けた場合、アルコール性肝硬変に進展していくことになります。
 
 アルコールが原因と考えられる肝硬変症は、日本全体の肝硬変症の10~15%と言われています。アルコール性肝硬変の特徴として、お酒を止めても基本的に肝硬変自体は治りません。しかし、肝炎ウイルスが原因の肝硬変症とは異なり、お酒をやめることさえできれば、肝機能は安定し回復して命を落とさないですむことがほとんどで、その点では、「アルコール性肝硬変は、本人次第で回復することが可能な肝硬変」と言えると思います。
 
 昔から、肝臓病というとお酒がつきものでした。大酒のみ=肝臓病、肝臓が悪い=酒が悪い......。しかし、肝硬変や肝臓がんになっている患者さんを調べてみましたところ、その80%以上は肝炎ウイルスが原因だったことも事実です。

どんな症状

 自覚症状としては全身倦怠感、アルコール性脂肪肝や、肝腺維症の多くは症状は軽く無症状の例も多くみられます。アルコール性肝炎や肝硬変の重症例では黄疸が出たり、腹水がたまったり、意識障害をきたしたりして極端な場合死亡することもあります。このような状態になると、肝臓は弱ってしまい毒素を解毒できなくなっています。

どんな診断・検査

 診断のキーポイントは正確な問診(1日の飲酒量と期間)です。また特徴的な臨床経過と血液生化学検査が大切です。一般に、アルコール性肝障害においてはGOT、GPT、LDHなどの上昇に加え特にγ-GTPの上昇が著明なのが特徴です。そして、GOTがGPTより高くなるパターンをとる場合が多くみられます。アルコール性肝炎では末梢血液中の白血球が増加します。脂肪肝や肝硬変などは超音波検査やCT検査などの画像診断も診断に役に立ちます。

どんな治療法

 アルコール性肝障害の病態によりその治療方針は若干異なりますが、いずれにしても基本的な治療は禁酒につきます。特に脂肪肝や肝腺維症においては禁酒以外には特別な治療はいりません。アルコール性肝炎や肝硬変などの重篤な例では劇症肝炎に準じた治療を行う必要があります。アルコール依存症として入院する場合も多くみられそのときはアルコール離脱症候群の治療が必要となります。これは禁酒後7〜8時間目よりはじまり20時間目がピークとなる振戦や不安感などの精神症状を主とする早期症候群と振戦せん妄を特徴とする後期症候群があります。早期症候群にはベンゾジアゼピン系薬剤を十分量から始めて漸減していく方法が一般的です。後期症候群の患者は意識障害や幻覚により著しく不穏な状態となるので隔離が必要なこともあります。この場合もベンゾジアゼピン系薬剤で対処します。ハロペリドールやクロールプロマジンなどの向精神薬の投与は意識障害を遷延化させることがあり注意が必要です。

どんな予防法

 飲むときには高蛋白食にするとかいろいろ予防策が指摘されていますが、食べながら飲むということは胃の粘膜を保護し、胃潰瘍や胃炎になるのを防ぐという意味ではいいようです。しかし結局のところ、飲み過ぎたら肝障害を予防することはできません。1日のお酒の量は健康をそこなわない範囲(日本酒換算1合程度)にとどめるのがよいでしょう。休肝日を設けるのは、総飲酒量を減らす意味でも推奨されます。欧米では日本に比べてウイルス性肝障害が少なく、アルコールによる肝障害が多いですが日本でも飲酒量の増加とともに、今後欧米のようにアルコールがより大きな問題となることが危惧されます。長期に大量のアルコールを飲み続けると、肝臓だけでなく、脳、膵臓、心臓など全身の臓器の障害を起こすという問題もあります。
 
 そして、アルコールに対する精神的依存が今後の日本でも重要な問題となっていくように思われます。アルコールはむしろ「心の問題」としてとらえていくことがより重要です。

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近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授…

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