心筋梗塞や脳血管障害の危険因子はいろいろと言われていましたが、それぞれの危険因子が重症でなくても幾つかの危険因子が重なると動脈硬化による心筋梗塞や糖尿病を発症する確率が高くなることが分かってきました。
2005年に日本動脈硬化学会、循環器学会、高血圧学会、肥満学会、糖尿病学会、腎臓学会、血栓止血学会、内科学会の8つの学会が合同して日本人にあった基準をまとめて提唱したものがメタボリックシンドロームです。この基準に合致する人は心筋梗塞などの心血管の病気を発症する確率が約3倍増加し、糖尿病になるリスクは5~10倍高くなるといわれています。日本人では男性で30~40%、女性で10%前後がこの基準に当てはまります。この人たちに自覚を促し生活習慣の改善を指導し、生活習慣病の予防を進めようというものです。
メタボリックシンドロームの診断基準は次のようになっています。
①ウエスト周囲径とはズボンのウエストではなくてお腹周りの最も太いところをいいます。立った状態で息を吐いたときのおへその周りを測ったものです。これは内臓脂肪の蓄積を表しています。本来、内臓脂肪は、腹部CTを撮って計測しますが、簡単にはできないのでウエスト周囲で代用します。この基準は内臓脂肪量が100cm以上と同等と考えられています。
肥満には皮下脂肪蓄積型と内臓脂肪蓄積型があり、前者は洋ナシ型の肥満、後者はりんご型の肥満になります。内臓脂肪が蓄積するとアデイポネクチンという物質が低下し、動脈硬化や糖尿病になりやすくなります。
②血圧は健常人では収縮期が140以下、拡張期が90以下を正常値としています。メタボリックシンドロームでは正常範囲ですが少し高目の血圧でも診断基準に入ります。肥満の人は正常高値でも心血管イベントの危険率が高いからです。血圧は120/80を目標にして下さい。
③高脂血症に関しても中性脂肪は正常上限が150前後で、善玉コレステロール(HDLC)は多いほうが良くて正常下限が40程度です。ですから正常値を少しでも越えればメタボリックシンドロームに入ってしまいます。
④空腹時血糖も正常上限は110程度で、これも正常を少しでも越えればメタボリックシンドロームに入ってしまいます。
以上のように今までそれぞれの値で投薬などの積極的な治療をしないで生活習慣の改善で様子を見ていた軽症の危険因子ですが、それが幾つか合わさることで危険な状態に陥るぞという警告を与えているのがメタボリックシンドロームだといえます。
メタボリックシンドロームと診断された人は食事療法と運動療法をしっかり行って早くメタボリックシンドロームと言われないようにしましょう。食事療法の注意は脂肪摂取量を30%に収め、1000kcalあたり15gの植物繊維を摂取することです。また運動は毎日30分以上週4時間以上の運動を心がけましょう。体重は5%下げることが目標です。
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