なぜ日本だけで加熱式タバコが売れるのか?
最近、加熱式タバコ愛好家の間で静かにブレイク中の“アイディア商品”がある。「貼るだけでかんたん着せ替え」「パロディ、オリジナル」などの謳い文句で販売する『グロー専用スキンシール』や『グロー専用デコシール』だ。一見「紙パック飲料」に見えるシールのバリエーションはさまざま。中には喫煙行為の真逆、健康志向を掲げた「野菜ジュース」仕様というカムフラージュ商品まである。
じつは、これらのグッズで周囲を欺き、電車内などでコッソリ喫煙する輩まで出没しているという。禁煙エリアでの悪用に対して、受動喫煙の被害を訴える人は “笑えない”グッズとして糾弾の声が上がり始めている。
隠れ喫煙を可能にさせているのはシールでのカモフラージュだけでなく、電子タバコや加熱式タバコなどの特徴である「煙が少ない」だ。加えて、灰も煙も出ないため「周囲の空気を汚さない」「室内や車内でも使用できる」「有害成分を〇〇%削減」――大手メーカーが異口同音で謳うこれらの利点も、ユーザーのマナー違反へのる心理的なハードルを下げているのかもしれない。
日本人のガジェット好きを狙った戦略とは?
すっかり日本に浸透した電子タバコ・加熱式タバコだが、大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部副部長の田淵貴大医師は、公衆衛生学(社会医学)・タバコ対策の専門医師の立場から、「日本人のガジェット(電子機器)好き」をくすぐるマーケティング戦略が功を奏していると指摘する。
著書『新型タバコの本当のリスク アイコス、グロー、プルーム・テックの科学』(内外出版社刊)の第4章「タバコ会社のマーケティング戦略」に、こんな興味深い記述がある。
<日本で加熱式タバコがブレークした理由について、JTのマーケティング部門の責任者は「法律上の規制で電子タバコが国内で出回っていないことのほか、他国に比べ日本人が周りに配慮する性格や、ガジェット(電子機器)好きであることが挙げられる」と分析しているようだ。筆者も同意見である>
また、「日本人のガジェット好き」「空気を読む国民性」を利用して販売世界シェアの96%を占めるまでにブレイクさせたメーカー側の「(加熱式タバコを)かっこよくみせる積極的なプロモーション活動」の一例として、こう挙げる。
<2019年時点での商品名「アイコス」のローマ字表記は「IQOS」と初めの「I」の文字は大文字が使われている。しかし、当初のアイコスは「iQOS」だった。(中略)戦略的に「アップルストアのiPhone」を真似したのではないかと話題になった。