自転車とクルマのせめぎ合い?(depositphotos.com)
店頭商品が気になって近寄ろうとした瞬間、音もなく追い抜こうとしていた自転車がスレスレで走り去っていった――。
歩行者側が驚きで声も出ないのをいいことに、詫びの一言も「大丈夫ですか?」と気遣うコトバもなく自転車は彼方へ消えた。
逆に「普通自転車歩道通行可」の規制標識が設置された歩道(車道寄り)を、自転車で徐行中――。
前を行く手つなぎカップルが幅を取っていたため、ベルを鳴らして追い抜いたところ、「自転車はあっちだよね……」と背中越しに女性の不満声が聞こえ、こちらも思わずムッとした。
こういう日常茶飯事の危機一髪な状況や感情のやりとりは、国土交通省と警視庁が推進する「自転車ナビマーク」や「自転車ナビライン」が利用者間で浸透/定着しても皆無となることはないだろう。
そもそも「自転車問題はそこからがスタート地点だろう」と、クルマを営業手段とする各界のプロ運転者さんたちは異口同音に語る。
「車道を逆走してくる<ママチャリ組>が一向に減らない。なかには前にも後ろにも子どもを載せて逆走のまま、平気で斜め横断してくるヤンママも結構いる」(宅配業者)
「率でいえば、赤信号を止まらない自転車、一時停止も完全無視する利用者のほうが圧勝でしょうよ。しかも、イヤホン走行で左右の確認もせずに路地からいきなり優先道路に飛び出して来るんですから、今やわれわれにとっては最大の凶器ですよ」(タクシードライバー)
マナーが追い付かず
「路上駐車のクルマが原因でナビラインの上を走れず、クルマの行き来が激しくて前にも進まないから苛立って、恨めし気にこちらを睨んでくる自転車利用者をよく見かける」
「可哀想だけどそういう人たちは慎重なぶん、まだマシなわけで。同じ状況下に置かれた場合、後方確認も一切せずに減速さえもしない自転車組が後を絶たない」(工事業者)
要は「ナビ以前の基本的なマナー問題」だと車道のプロたちは口を揃える。それは冒頭で紹介したような危険事例や感情案件が「歩道」から「車道」へ移行しただけとも言えるだろう。
視点を変えれば、歩行者に恐れられた強者(自転車)が、ナビに導かれて車道へ出た途端、万が一の際は(車両構造上)弱者に転じる可能性が高まったともいえる。
自転車ナビマークには本来、①自転車が歩行者を巻き込む事故を防ぐ、②自転車がクルマと同じ進行方向で走ること(=左側通行)を促す、という2つの狙いがある。
②に関しては、クルマと逆方向を走るとお互いに気づきにくいという現象が背景にある。しかし、自転車ナビマークは法律上定めたものではないため、かりに守らなくても罰せられることはない。