甲状腺機能異常と自律神経失調症
――卵巣機能低下のほかに原因は考えられますか?
「甲状腺機能異常」と「自律神経失調症」を挙げることができます。
甲状腺機能異常は、甲状腺ホルモンの分泌量が不十分又は過剰となる疾患です。いずれの場合もひどくなると生理不順が生じるので、婦人科を受診する方患者もいらっしゃいます。その場合、うちのクリニックに来院した患者さんで、甲状腺機能異常が見つかった場合は別の内科医を紹介しています。
自律神経失調症は、年齢に関係なく出現します。のぼせやほてりなどの更年期にみられる症状が気になっている患者さんが、予約の時に「更年期だと思う」とおっしゃることは珍しくありませんが、検査をしてみたらホルモン値は正常で、実は自律神経失調症だったというパターンが多くみられます。
自律神経は、心臓の鼓動を調整するなど自分の意思ではコントロールできない自動的に働く神経のこと。自律神経は人間の活動をつかさどる「交感神経」と休息をつかさどる「副交感神経」によって成り立ちます。また、自律神経をコントロールするのは脳の視床下部です。
交感神経と副交感神経のバランスを保つ視床下部ははストレスに弱く、緊張状態が続くと睡眠が浅くなり眠れなくなるなどの睡眠障害を生じさせます。これはストレスによって交感神経と副交感神経のスイッチがうまく切り替われないことが原因です。
消化を促すのも副交感神経の働きによりますが、交感神経の優位が続くと食欲が落ちたり、めまいや頭痛のほかに、のぼせやほてりが併発することもあります。そのため患者さんが更年期と勘違いしてしまうこともあるのです。ホルモン検査によって卵巣機能がどの程度保たれているかは確認できるので、すぐに判明します。
――更年期障害に該当するか調べる方法は?
気になる症状が更年期障害に該当する症状なのか、また治療を行うべきなのかという目安に用いられるものに、簡略更年期指数(SMI)があります。更年期指数の自己採点の評価法ですから、気になる人はネットからダウンロードしてチェックしてみましょう。ただし、更年期世代ではない方がチェックしても意味がありません。
もし、自律神経のバランスが乱れたことから起こる症状なら、自律神経訓練法で、自分でリラックスする訓練を行ってみてください。
自律神経訓練法は、1932年にドイツの精神医学者J・H・シュルツ教授が始めたリラクゼーション法のひとつです。心療内科や精神科などでも使われる一種の自己催眠法で、わずか数分で心身の疲れがすっきりとれて、全身をリラックスさせることができます。
(インタビュー・文=夏目かをる)
清水なほみ(しみず・なほみ)
ポートサイド女性総合クリニック「ビバリータ」院長
2001年、広島大学医学部医学科卒業。広島大学附属病院産婦人科、中国がんセンター産婦人科、ウィミンズウェルネス銀座クリニック、虎の門病院産婦人科を経て、2010年9月「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業。
日本産科婦人科学会専門医、 日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー。
所属学会:日本産婦人科学会・日本性感染症学会・日本思春期学会・日本不妊カウンセリング学会