握る際に“手袋着用”の米ニューヨーク州
1960年代に「SUSHI」ブームが起こったアメリカ。低脂肪・低カロリーな寿司は高学歴で専門職に就くエリートたちに支持され、SUAHIバーは全米に広がった。
いまではそう珍しくなくなった寿司だが、ニューヨーク州では20年以上前から「握る際は手袋着用」が義務づけられている。これは寿司に限ったことではなく、「74℃以上の熱処理をしていない食品は素手で扱ってはいけない」という基準があるからだ。
かたやカリフォルニア州では、一昨年に手袋着用を義務づける法律が定まったものの、1万9000もの反対署名によって半年で撤回。アメリカでは、手袋着用か否かは州によって異なるようだ。しかし、日本では一部のチェーン店などを除いて、手袋着用で寿司を握ることはない。
ビニール手袋で握ったお寿司なんて! 他人が握ったおにぎりは食べられなくても、手袋着用で握った寿司には「NO」というわけだ。
素手で握っても大丈夫な理由とは?
その理由のひとつは、「寿司職人というプロフェッショナルが握っている」という安心感だろう。徹底した手洗いと、調理道具の消毒・管理など、長年培われてきたものがあるからだ。
また、酢飯に使われる酢じたいに防腐作用がある。ある調査によると、ご飯と酢飯を比較すると、調理直後は細菌数に違いはほとんど見られないものの、24時間後には普通のご飯は細菌数が増え、酢飯は微増。普通のご飯に比べ10万分の1という数字だった。
そして、ワサビの辛み成分・アリルイソチオシアネートにも抗菌・殺菌作用がある。微生物の増殖を抑えると同時に、刺激が食欲を増進させる。一緒に食べるガリにも殺菌・消化促進効果がある。冷蔵施設の十分でなかった時代からの知恵だ。
おにぎりと寿司、ともに人が握って作るものながら、衛生感覚の物差しひとつで、食べられるかどうかが決まる。清潔好きの日本人らしいといえば、日本人らしい食べ物だといえる。
(文=編集部)