「集中」「吹く」で脳や肺が活性!
巷にはいろいろな健康法が溢れているが、今注目されているのが「吹き矢」。公共施設などでは、「健康吹き矢教室」があちこちで開講されている。「老若男女が気軽に楽しめるスポーツ」というふれこみは、運動不足の人にも敷居が低く、参加心をくすぐるようだ。
日本吹矢道協会西東京支部の吹矢教室「吹き矢ヒルズ」の西村英二オーナー(76)は、喘息のために7年間も病院通いをしていた。4年前に友人から紹介されて「スポーツ吹き矢」を体験。これは面白そうだと、吹き矢の指導者になる勉強を始めた。そして2012年1月、自前の店舗を活用して吹き矢教室「吹き矢ヒルズ」をスタート。現在、40代から80代まで約40人が吹き矢にチャレンジしている。
吹き矢は、日常的に無意識で行っている胸式呼吸と、腹筋を使ってゆっくり息をする腹式呼吸の両方を使う。それによって体内の血行を促進させ、腸などの内臓にも刺激を与え、便秘や食欲不振にも効果があるという。喘息で苦しんでいた西村さんも、吹き矢の効果で元気になった。
西村さんが勧めるのは、スポーツとしての「スーパー吹き矢」。ダイナミックでありながら武道を重んじる流儀で、段位や級の認定を受けることができる。
ルールは10mの距離から矢を的に当てる。初心者の距離は5mから。長さ1.2mの筒の内径(13mm)に、先端に釘を取り付けたフィルム製の手作り矢(長さ約20cm)を入れて吹くのだ。1ゲームは10本ずつ3回、計30本の矢を吹く。
初心者は5mの距離からスタート。的の中心(直径6cm内)に当たれば7点、的から直径12cm以内は5点、同18cm以内は3点。パーフェクトなら1回7点×10本で70点。3ゲーム続けてパーフェクトなら最高点の210点をゲットできる。和気あいあいと和やかな雰囲気の中で、得点を目指して吹き競う。
「鼻で息を吸って! 一気にプーッ」「的外れ!」初心者用の5mではこんな指導風景が......。大きく息を吸うとお腹が風船のように膨らみ、一気に吐き出すとお腹が引っ込む。ほどよい緊張感と集中力も非日常的な感覚だ。
「集中」「吹く」で脳や肺が活性化して若返る
慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っている人が、リハビリテーションの一つとして吹き矢を取り入れているケースは多い。
COPDは慢性気管支炎または肺気腫とも呼ばれる、いわゆる「たばこ病」。正しく呼吸ができず、咳や痰、息切れなどがおこる苦しい病気だ。日本人の40歳以上の10人に1人、75歳以上の5人に1人にCOPDの疑いがあるといわれている。COPDで亡くなる人は、日本では毎年2万人近くいる。年々増加しており、2020年までには死因の第3位になると予想されている。
一度発症すると、元の健康な肺には戻れない疾患だ。治療は病気の進行を防ぐことと、症状を和らげて生活の質(QOL)を上げるしかない。
「まずは、息つぎがうまくできること。息の吸い方が少ないと的に当たらない。"集中する"ことで脳を、 "吹く"ことで肺を活性化させる」と話すのは、会員の一人。
咳に苦しんでいたが、吹き矢を始めて約3年でいやな咳から解放されたという。スポーツ万能らしく、最後は吹き矢にたどりついたというが、若さみなぎる。「ゴルフでいえばパターと同じ。吹きやすいように力を抜いて一気に吹くのがコツ」とアドバイスしてくれた。
「若者はスポーツで高見を目指してほしい。中高年は元気を取り戻して」と西村さん。健康増進にはよさそうだ。教室は西武池袋線ひばりケ丘駅から徒歩10分。費用は月4回2000円。的1900円、筒1500円、矢(10本)500円。吹き矢ヒルズ TEL042-421-6686
(文=編集部)