予防歯科は本当に必要? 予防治療を受けていたのに歯の病気で1週間入院

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抜いた歯(左)と歯根の膿

 数カ月に一度、歯石やプラーク(歯垢)を落とす予防歯科を勧める歯科医院が増えている。「虫歯予防に効果がある」というのが謳い文句だが、実際には保険適用で歯科衛生士による処置で間に合うことから、歯科医が治療費の水増しに利用しているのが現状だ。「予防歯科に罹っていたが虫歯が悪化した。入院を余儀なくされて手術までした」と効果を疑問視する患者の証言もある。「予防が大切で...」という歯科医の誘導には慎注意した方が良さそうだ。
 
 予防歯科はまず、歯を着色して歯垢を浮かび上がらせ、磨き残しを自覚させる。専用の機器を使って歯垢の残り具合や歯と歯茎の隙間の測定をした上で、歯科衛生士が実際に歯ブラシを持って正しい歯磨きの方法を伝授。また、器具を使って歯石を落とし、フッ素を塗って虫歯になりにくい歯を作る。こうした処置を3カ月~半年に1回行う。保険適用の上、患者負担は1回3千円前後が一般的だという。
 
 中国地方で個人医院を営む歯科医の男性は「虫歯がまったくない人は、予防歯科で受ける処置が大いに効果がある。継続的に通って虫歯のない状態をキープすべきでしょう。ただ、すでにクラウン(銀歯)や詰め物の歯がある患者への有効性は疑問」と打ち明ける。「とにかく健康な歯には有効」(同)と強調するが、周辺の歯科医では「かなりいい加減な処置が横行している」と指摘する。実際に「いい加減」という歯科で出された明細書を見せてもらった。
 
 まず「歯科衛生実地指導1」(80点、1点=10円)。厚生労働省の診療報酬点数表では、虫歯か歯周病に罹患している患者に対して主治医の指示を受けた歯科衛生士が15分以上指導した場合にかかる費用。だが、問題の歯科では「一言二言、歯磨きの注意点を伝えておしまい」(問題の歯科医院に通う患者)。「機械的歯面清掃処置」(60点)は読んで字のとおり、機器を使って歯を磨く処置だが、「丹念にやるわけではなく、治療の合間に歯科衛生士がチャッチャとやるだけ」(同)。いずれも形式上の処置だが、問題の医院では治療のたびに"処置"が繰り替えされ、ちゃっかり治療費に上乗せされていた。
 

●予防治療を受けていたのに手術で1週間入院

 この医院に通っていた患者の男性(40)は「予防に通っていたのにエラい目にあった」と憤る。ある日、男性は銀歯の下に激痛を感じて歯科医院に駆け込んだ。レントゲンを撮影されて「これはうちでは無理ですね」とさじを投げられて、近くの大学病院を紹介されたという。
 
 男性の診断名は「歯根嚢胞(しこんのうほう)」。神経を抜き、銀歯を被せた歯の根っこに大きな膿の袋ができ、炎症を起こしていた。その後、顔が変形するほどの腫れたため1週間ほど入院した。抜歯と歯茎を切って膿の袋を摘出する手術を受けたといい、その際に摘出されたホルマリン漬けの歯と膿を見せてくれた。
 
 今回、問題を指摘してくれた前出の歯科医の男性は「クラウン(銀歯)や詰め物の下は必ず虫歯ができる。これは歯の内面の部分なので防ぎようがない。それなのに毎回、クラウンを磨いたり、同じような歯磨き指導を繰り返すのは詐欺的だ」と語気を強める。ただ、「歯科の保険適用の範囲は極めて狭く、消毒といった衛生管理も十分な診療報酬とはいえない」(同)といい、形式上の予防歯科で補填せざる得ない歯科の診療報酬制度のお粗末さが背景にあるとしている。
(文=編集部)

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