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ARBやACEIなどの高血圧治療薬を服用すると先天異常の子供が生まれる?

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30~40代女性の高血圧症は徐々に増えている

 国内で多数使用されている高血圧治療薬を服用した妊婦で、先天異常の子供が生まれるなどの事例が報告されている。厚生労働省所管の独立行政法人・医薬品医療機器総合機構は、平成23~25年度にかけて高血圧治療薬のアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)を服用していた妊婦で、「これらの薬との関連が疑われる28例の先天異常例などが発生した」として注意を呼び掛けている。

 アンジオテンシンは体内で血圧を上昇させる生理活性物質の総称で、そのうちのアンジオテンシンⅡは副腎皮質にある受容体という部分に結合すると、アルドステロンの合成・分泌を促進し、この結果、血圧が上昇する。また、アンジオテンシン変換酵素は、アンジオテンシンの中で血圧上昇作用はないアンジオテンシンIをアンジオテンシンⅡに変えるための酵素だ。ARBとACEIはいわば親戚関係のような薬剤で、それぞれが血圧の上昇を抑える。高血圧治療薬は、その作用の仕方から何種類かに分けられるが、国内ではARB、ACEIのいずれかを服用している人の合計は、高血圧治療薬を服用している人の半数を超えるとみられている。

●ARBやACEIの副作用は既に指摘されていた

 今回報告された副作用は、妊婦での羊水過小や早産、胎児側では死亡や骨の形成が不十分な例や生まれながらに腎不全の症例など多岐にわたっている。

ところが、このARBやACEIの妊婦での副作用は、今回、初めて分かったことではない。

 例えば、1990年代前半に発売が始まったACEIでは、既に当時から妊娠中期および末期の妊婦で羊水過少症、胎児・新生児の死亡、羊水過少症が原因と推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形などの報告があるとして、妊婦への投与を控えるよう、医師向けの医薬品の説明書ともいえる添付文書で注意喚起が行われた。その後、2000年代にARBが発売されると、そちらでも同様の措置が取られ、最終的には妊婦に対していわば投与禁止である「禁忌」となった。

 そして06年には、医学界でも信頼性が高いと言われている専門誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』にアメリカのバンダービルト大学の研究者が、「ACEIを服用した妊婦から生まれた新生児の奇形リスクは、ACEIを服用していない妊婦から生まれる新生児に比べ2.71倍も高い」と公表するなど、様々な方面から再三にわたりその危険性が指摘されていた。

 このため08年8月には、ARBやACEI投与中に患者が妊娠した場合、直ちに投与を中止する旨の文言が、添付文書に加えられるなどの追加措置も講じられた。しかし、08~10年度の間にも、ARBとACEIを服用していた妊婦での新生児先天異常などは、20例も報告されていた。この数字からも分かるように、注意喚起にもかかわらず、むしろ報告数は年々増加している。

●注意を喚起しても症例が減らない理由

 理由としてまず挙げられるのが、医師側の不注意。医師といえば医療の専門家だと思われがちだが、実のところ膨大な数の薬の細かな注意事項となると、医師側も知識が追い付いていないことは少なくない。このため、ある種の薬で禁忌となっている患者に気づかずに投与してしまっている例は後を絶たない。

 もう一つには、疾病構造の変化がある。高血圧症を例にとると一般的には高齢者の病気と捉えられがちで、これ自体は間違いではない。しかし、食の欧米化や女性の喫煙率増加など、高齢者でなくとも高血圧になりやすい状況は過去よりも進展していて、実際、30~40代の妊娠可能な女性でも高血圧症は徐々にだが増えているのだ。

 つまり、今回の事態は単なる医療過誤というものにとどまらず、患者側、とりわけ妊娠可能な年齢の女性では一定の節制は必要ということも意味する。

 また、これも当たり前のことだが、患者側も自分にどのような薬が投与されているのか、その薬の注意すべきことは何かについて無関心でいるのは望ましいことではない。現在、患者は病院ではなく、調剤薬局で薬を受け取っていることが増えているが、薬局で薬を手にした際に同時に渡される薬の注意事項が記された紙などは、必ず目を通すべきだろう。

(文=編集部)

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