【病気の知識】

B型肝炎

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どんな病気

 B型急性肝炎は、A型急性肝炎などと同様に、全身倦怠感、発熱、食欲不振、腹痛などがみられますが、キャリアの多くは病態が進行してない状態ではほとんど、無症状で経過します。肝硬変に進行した場合には黄疸、腹水、浮腫、意識障害などを認めます。

 このB型肝炎ウイルスが関与した肝臓病を理解していく上で、「ウイルスキャリア」を含め「肝炎」の概念をまず説明する必要があります。

 肝臓にB型肝炎ウイルス(HBs抗原)が感染した時大人の場合は、ウイルスを認識し排除しようとして戦い、HBウイルスは駆除されて、この感染は一過性に終わります(=急性肝炎)。急性肝炎が終結すれば、免疫力(HBs抗体)ができて、二度とB型肝炎にはかかりません。

 ところで、赤ん坊の場合はHBs抗原を異物として認識できないため、出産時や幼少時にウイルスに感染すると免疫が働かず、ウイルスを体内に容認し肝障害はおこりません。

 このようにウイルスに感染していても肝障害を起こしていない状態を「無症候性キャリア」といいます。このことはB型肝炎ウイルスそのものが、肝臓に対して障害作用を持つわけではなく、ウイルスを排除しようとする免疫の力が肝炎を引き起こすのです。この無症候性キャリア状態は一生続くこともありますが、多くはそうはいきません。なぜならこの赤ん坊が成長するにしたがって、免疫は成熟し、また長い年月の間に、ウイルスも形をかえる(変異)ため戦いが始まることが多いのです。

 これがB型慢性肝炎のはじまりです。問題は、この攻撃により早い内にウイルスがおとなしくなれば無症候に戻るのですが、必ずしもそうはいかずに、肝臓のあちこちで小さな戦争が延々と続くこととなり、肝臓は徐々に荒廃していく場合もあります。現在、B型慢性肝炎として治療を続けている患者さんのほとんどは、赤ん坊の時に感染し、成人になって肝臓の中で戦いが続くようになった方たちなのです。

 B型肝炎ウイルスに赤ん坊の時感染した人の多くは、10代から30代にかけて肝炎が発症しその80~90%は、肝炎は鎮静化して再び無症候性キャリアに戻ります。この時、血液中ではHBe抗原が消失し、HBe抗体が出現します(この現象をセロコンバージョンという)。HBe抗体が出現することは基本的にHBウイルスの増殖力が低下したことを意味します。そして、このような経過をとったHBキャリアは、以後大きな肝臓の問題はおこさずに過ごしていくのが一般的です。

 しかし、残りの約10~20%は肝炎は鎮静化せずに経過し、HBe抗原も陽性が持続して、慢性肝炎から、肝硬変そして肝癌に進展していく可能性があり治療対象となる患者さんなのです。まれにHBe抗体陽性になっても肝炎の持続する患者さんもいます。ウイルスが特殊な変異をとげた、結果と考えられます。

 特殊な例として、免疫状態に異常がみられるAIDSの患者さんや透析を受けている患者さんなどでは、大人になって感染してもHBウイルスキャリアとなる場合があることも報告されています。

 世界におけるB型肝炎ウイルスのキャリアは世界におよそ2億人いるといわれていますが、欧米では低率です。ところがアフリカや東南アジアでは極めて高率で、平均すれば10人に一人位ですが、日本はその中では低率で人口の1~2%となっています。

 それでは、赤ん坊の時にB型肝炎ウイルスに感染するとは、具体的にどういう場合に起こっているのでしょうか。ウイルスのキャリアの人が妊娠しても、赤ん坊は胎盤でお母さんの血液とは隔離されていますので母体内では感染しません。ところが、出産時には赤ちゃんはお母さんの狭い産道を通過して生まれてきます。その時にお母さんの血液に触れることとなり、小さな傷などからB型肝炎に感染すると考えられています。この母児感染が多くをしめ、それ以外に幼少時何らかの血液感染した子供がキャリアとなるのです。

どんな症状

 B型急性肝炎の場合はA型急性肝炎などと同様全身倦怠感、発熱、食欲不振、腹痛などがみられますが、キャリアの多くは病態が進行してない状態ではほとんど無症状で経過します。肝硬変に進行した場合には黄疸、腹水、浮腫、意識障害などを認めます。

どんな診断・検査

 B型肝炎病態を知るためにはウイルスマーカーの測定が必要となります。HB抗原(HepatitisBの略、Hepatitis=肝炎)として、HBs、HBc、HBeの3種類の抗原が測定されています。

 その中で、一般的に検診などで測定されているHBマーカーはHBs抗原です。HBsのsはsurfaceのsで「表面」の意味です。ウイルスの服と思って下さい。この抗原に対する抗体、すなわちHBs抗体は感染を防御し中和する力をもった抗体であり、この抗体価が高い人の血液から、HBs抗体を精製して母児間感染予防などに用いられています。HBcのcはcoreのcで「芯(or核)」の意味で、HBウイルスの本体ということもできます。B型肝炎ウイルスはこの芯(=HBc)のまわりを服(HBs)で包んだ球形の構造をしています。そして、HBc抗原とは、HBウイルスの芯に存在している抗原のことです。

 一般にHBウイルスに感染すると早期から必ずHBc抗体ができてきます。これはHBs抗体と異なりウイルスを中和する能力のない抗体ですが、抗体産生能が良いことから、B型肝炎ウイルスに感染したことがあるかどうかの判断をする際に用いられています。

 HBe抗原はHBウイルスの芯(core)の中に存在し、ウイルスの中枢である遺伝子(HBV-DNA)の活動と関連して、肝細胞外に分泌される小さな蛋白質です。血液中にHBe抗原が検出される時はウイルスの量も多く、ウイルスの増殖が盛んな時と考えられています。ウイルスの増殖力が低下した状態では、HBe抗原は一般に消失し、HBe抗体が検出されるようになります。

 HBV-DNAポリメラーゼはウイルスの複製を作る時必要な酵素で、B型肝炎ウイルスの増殖状態を示します。また、HBV-DNA量の測定により、存在しているHBウイルスの量を推定することができます。

 以上のような血液中のHBウイルスマーカーを適宜測定することにより、それぞれの患者さんにおけるB型肝炎ウイルスの感染状況を明らかにすることができ、治療を行う際にも、これらのウイルスマーカーはたいへん役にたっています。肝炎の程度や進行度はGOT、GPTや肝予備能の検査やエコーなどの画像診断で検討します。

どんな治療法

 インターフェロン療法を中心にいくつかの治療法があります。

●インターフェロン療法
 B型肝炎の治療はキャリアから発症した慢性肝炎のうち、一般にはHBe抗原が持続する慢性肝炎を対象に行います。C型肝炎に比べて、インターフェロンの有効性が低く治療に難渋する例も少なくなりません。従来より認められていインターフェロン投与では大きな改善率は望めません。最近では6カ月以上の長期のインターフェロン投与の有効性が指摘されています。

●核酸アナログ製剤治療
 ウイルスが増殖する過程を阻止することによって、増殖を抑制する薬剤。B型肝炎の治療で用いられており、高いウイルス抑制効果が期待できます。現時点では、ラミブジン、アデホビル、エンテカビルなどの薬が保険適用となっています。内服を開始すると長期にわたって服用が必要になることから、薬に耐性をもったウイルスが出現してくる可能性のあることが報告されています。治療にあたっては専門の医師とよく相談することが必要です。

●プロパゲルマニウム
 ゲルマニウムの化合物の一種のプロパゲルマニウムは、インターフェロン産生増強作用や免疫の力を増強する作用を持っているためHBウイルス増殖抑制が期待できる経口薬ですが、肝炎が劇症化し肝不全を起こし死亡した例が報告されたため、使用法が見直された。現在では、黄疸のある場合には使用しないことや、2週間ごとに肝機能検査を行い異常が認められたら中止することなど、細かい使用上の注意が定められています。

●ステロイド離脱療法
 副腎皮質ステロイド剤は免疫の力を抑える薬剤で、一定期間投与して急にやめると跳ね返り現象で免疫力が急に強まり、B型肝炎ウイルスの増殖をおさえ肝炎を鎮静化できことがあります。成功率を高めるためインターフェロン併用を行う場合もあります。治療により逆に肝機能の悪化をみることもあり、慎重に取り組むべき治療です。

●ラミブジン療法
 ヌクレオシド誘導体の経口抗ウイルス剤で、当初エイズウイルスの複製過程である逆転写を特異的に阻害することから、エイズウイルスの治療薬として開発されました。最近B型慢性肝炎に対する臨床試験においてウイルスの減少を多くの患者さんに認め保険薬として認可されました。投与中にウイルスが増加する例があり、また中止後はほとんどの例で再燃するため今後のさらなる投与法の検討が必要ですが期待の大きな治療法です。

どんな予防法

 B型肝炎の予防でもっとも重要なことは母児間感染の予防で、HBs抗体を含有するγ-グロブリン製剤とHBワクチンを用います。決められたスケジュールに従って予防対策を行った結果、そのほとんどのケースで赤ん坊への感染の成立を防ぐことができました。今後、新たなキャリアの出現はなくなるものと思われます。また、これらの薬剤を用いた感染予防の方法は、母児間だけでなくHBキャリアの患者さんと接触する機会の多い医療関係者や、HBウイルスキャリアの配偶者などへの感染予防としても利用されております(成人でこの肝炎にかかる多くは性交による感染が多く、配偶者がキャリアである場合などはあらかじめ、ワクチンを投与すれば感染を防ぐことができます)。

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