【病気の知識】

夜尿症

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どんな病気

 「おねしょ」とも呼ばれる状態で、小学校に入るくらいの歳になっても夜間睡眠中に尿失禁がある状態です。ほとんどが「病気」という状況ではなく、成長過程の一時期と考え家族のサポートが大切です。生まれてから続いているのを一次性夜尿症といいます。幼児期から学童期にかけて少なくとも1年以上消失していた夜尿症が再びみられるようになったのを二次性夜尿症といいます。

どんな症状

 夜間睡眠中の尿のおもらしです。昼間のおもらしは昼間遺尿といいます。夜尿症だけでなく昼間のおもらしも伴う場合もあります。タイプとしては大きく分けて次のようなものがあります。

①夜間多尿型(睡眠中に濃さの薄い尿がたくさんでる)

②膀胱容量が少ない(膀胱型、排尿機能未熟型、膀胱機能未熟型とも言い、容量が200~250ml以下です)

③混合型=①+②で、膀胱容量は少ないのに尿量が多い場合で、①や②に比して治るのに少し時間がかかります。

 夜尿症の20%位は、昼間の尿のおもらし(尿失禁)を伴う場合もあります。特に①の夜間多尿型よりも②、③に合併することがあります。

 昼間のもらしを伴う中には次のような病気の可能性もあります。

④神経因性膀胱といって膀胱や尿道の筋肉の働きや機能が悪い場合があります。

⑤腎臓・尿管・膀胱・尿道の機能異常や奇形によって昼間のおもらしや繰り返す膀胱炎や腎盂腎炎などがある場合もあります。

 ⑤の中には④の神経因性膀胱がみられることもあります。慢性腎不全では夜尿、多飲、多尿、成長障害、貧血、高血圧などがみられます。また非常に稀には、一方の腎臓からでた尿管が、正常なら膀胱に開いているのが腟に開いている場合もあり、毎日昼も夜も本人の意識とは無関係におもらしがあります。この様な場合には、こどもの尿失禁を取り扱っている泌尿器科や小児外科で診てもらいます。

⑥心因性によって水をたくさん飲む心因性多飲症あるいは習慣性多飲症といわれるものもあります。心理的カウンリングが必要です。

⑦まれには抗利尿ホルモン分泌不全による尿崩症があります。毎日2~5リットル以上の水(冷たい水を好む)を飲み、従って夜尿がありさらに夜起きて水を飲みます。その場合にはまれには原因として脳腫瘍もありますので小児内分泌専門医で診てもらうのがよいでしょう。

 また、腎性尿崩症といって抗利尿ホルモンは正常に分泌されていても、腎臓で抗利尿ホルモンが作用しない場合もあります。その場合には家系内にもその様な人がいる場合があります。

⑧糖尿病でも夜尿、多飲、多尿がみられます。

⑨膀胱内に尿が充満しても目が覚めないのが一因だとする考えもあります。

どんな診断・検査

 夜尿の状態から一次性か二次性かを区別します。二次性の場合は、下の子が産まれてから、親に怒られてから、幼稚園や学校での友達関係で、病院に入院してからとかの心理的ストレスによるものが大部分で、そのストレスを無くすようにするのが一番です。また、夜尿に伴う昼間のおもらし、頻尿(トイレに何回も行く)、がんこな便秘、便のおもらし、繰り返す膀胱炎や腎盂腎炎などの有無も聞きます。

 一般的な検査としては、検尿(顕微鏡で見る尿沈査も含む)は必ずします。尿の濃さをみる尿比重か浸透圧も検査します。タイプによっては、見極めるために、一晩の尿量と尿浸透圧(尿の濃さ)の測定や機能的膀胱容量(がまん尿量:トイレに行くまでぎりぎりがまんできる尿をためることの出来る膀胱の大きさ)の測定が必要です。

 一晩の尿量と尿浸透圧の測定は、寝る前に排尿させ、その後、本人の普段の夜尿する時間にもよりますが、夜中の2時~3時頃に起こして排尿させて尿量を測りその一部を保存して尿浸透圧を測ります。夜間の尿はぬれた紙おむつの重さを測ってもよいです。また、朝起きたときの尿量も測定してその一部を保存しておき尿浸透圧を測ります。夜中の尿量と朝一番尿の尿量の合計が夜間尿量です。これを3~5日間おこないその平均値から一晩の尿量と浸透圧をみます。

 機能的膀胱容量の測定は、休日の昼間かあるいは学校から帰宅後ぎりぎりまで排尿をがまんさせて、我慢しきれなくなったときに排尿させて一回分の尿量を全て測定します。それを3~4日間行いその最大尿量を機能的膀胱容量とします。

 腎奇形や慢性腎不全では高血圧になることもありますので血圧も測定します。腎機能をみるために血液検査もします。昼間のおもらしや頻尿があれば二分脊椎の有無をみるために脊椎のX線検査もします。さらに必要であれば腎・膀胱の超音波検査やX線検査もします。

どんな治療法

 夜尿症のタイプによって異なります。

 ①夜間多尿型の場合には、うつ病に使う抗うつ剤が第一選択です。これは下垂体からの抗利尿ホルモンの分泌を促し、夜間膀胱に尿がたまった刺激で目覚めやすくする作用があります。1~2週間投薬、1週間休薬で内服します。また、抗利尿ホルモンを鼻に点鼻する方法もあります。また、干渉低周波電流を用いて膀胱・及び尿道等の排尿機関に刺激を与え神経及び筋組織に対する治療もあります。

 ②膀胱型には、抗コリン剤(バップフォー、ポラキスなど)を使用します。これも1~2週間投薬、1週間休薬したり、あるいは2日間投与、1日間休薬の方法で投薬します。

 ③混合型には、①、②に対する薬を併用します。しかし、これらの薬を服用してもすぐ夜尿が消失しない場合もありますが、なかなか消失する場合も少なくありません。効果がないのにダラダラと薬を服用するのではなく主治医とよく相談して下さい。比較的軽症例では漢方薬が効果のある場合もあります。特に昼間のおもらしや頻尿があって、薬物療法で治らない場合には、泌尿器系の異常も考えられますので、こどもの尿失禁を取り扱っている泌尿器科や小児外科で診てもらいます。

 夜尿が朝の4~6時頃の明け方とか尿量だんだんと少なくなってきているとか、夜尿のある日数がだんだんと少なくなってきている場合は、治る方向に向かっています。

どんな予防法

 おねしょを病気として取り扱わない。上手につきあう家族の協力が必要です。膀胱型には、排尿抑制訓練(トイレに行きたくなったらがまんする)を、昼間もらすようであれば排尿中断訓練(排尿時に5~10秒間くらい排尿を中断する)をしましょう。ただし、泌尿器系に異常があるとこれらの訓練で悪化する場合もあるので注意が必要です。また、日ごろから以下のことに気をつけましょう。

▶︎夕方から水分ひかえめにして、塩分もひかえめに
▶︎夕食は早めに、可能なら少なくとも寝る2~3時間前に夕食を終えましょう。
▶︎夕食のみそ汁、スープはひかえめに
▶︎夕食後は食べたり飲んだりしない
▶︎寝る前に必ずトイレに
▶︎夜は起こさない
▶︎冷え症なら、寒い季節は寝る前にゆっくりと入浴し、寝具もあらかじめ暖めておく
▶︎夏はクーラーで冷えないように
▶︎ストレスがあれば取り除く、必要なら心理的カウンセリングをうけましょう。

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