身長の成長が通常より低い病気です。治療が必要な場合は少ないですが、原因は「ホルモン異常」「染色体異常」「脳腫瘍」など重篤な場合もあります。治療薬・治療法は様々あり、効果もきちんと出る病気です。以下のような病気が考えられます。
①成長ホルモン分泌不全性低身長症
②甲状腺機能低下症
③性腺機能低下症
④ターナー症候群を代表とする染色体異常症
⑤骨系統疾患(軟骨異栄養症など)
⑥非内分泌性低身長症
特発性低身長
体内発育不全性低身長
家族性低身長
⑦消耗性慢性疾患
⑧愛情遮断症候群
⑨ヌ-ナン症候群
⑩慢性腎疾患
⑪脳腫瘍
まず、本人の成長曲線を描きます。その次に家庭の状況をききます。両親の身長は低くないかを聞きます(家族性低身長)。また、家で虐待されるなど親の愛情が途切れれば、身長は伸びません(愛情遮断症候群)。
その次に、手根骨のレントゲンをとり、発育が遅れていないかを見ます(骨年齢といいます)。次に採血して、ソマトメジンC(脳下垂体より出る成長ホルモンが肝臓に作用して肝臓からでる成長促進因子)や甲状腺ホルモンを測定します。骨年齢がおくれていて、ソマトメジンCが低値であれば、成長ホルモン分泌不全性低身長症を考え,次ぎに述べる負荷試験を行います。頭部のMRIをとって脳腫瘍の有無を調べます。また甲状腺ホルモンが少なければ、甲状腺機能低下症を考えます。
染色体検査を行って、タ-ナ-症候群など染色体の異常も調べます。骨のレントゲンで、軟骨異栄養症を、尿検査、血液検査で腎臓疾患を調べます。
もし、成長ホルモン分泌不全性低身長症が疑われた場合負荷試験が必要です。負荷試験は、L-DOPA、アルギニン、クロニジン、インスリン、グルカゴン+プロプラノロ-ルの5種類を各々子供に注射して30分ごとに2時間成長ホルモンを採血して測定します。1日に1種類の負荷試験しかできません。この5種類のうち2種類の負荷試験で成長ホルモンが出ていない場合はその結果を成長科学協会に送り、許可が出た場合、成長ホルモン補充療法が開始されます。5種類すべて負荷試験をするわけではありません。
成長ホルモン製剤があり、これは血液製剤ではないのでエイズなどの心配なく使用できます。成長ホルモンが適応とされている疾患は以下です。毎日、あるいは2日に1回自己注射します。
①成長ホルモン分泌不全性低身長症
②タ-ナ-症候群
③軟骨異栄養症(軟骨無あるいは低形成症)
④低身長を伴う慢性腎不全(いずれも骨端線閉鎖を伴わない)
副作用は注射部位の感染など局所的なことはありますが、その他は特にありません。成長ホルモンを打っていると白血病にかかりやすいといわれたことはありますが現在否定的です。高価な薬なので、小児慢性疾患対策事業のひとつになっています。
成長ホルモン分泌不全性低身長症によくにた病気でラロン型小人症という病気があります。成長ホルモンは正常に分泌されていますがその作用因子のソマトメジンCの不足している病気です。また、いままで治療方法のないといわれていた非内分泌性体質性低身長症のうちSHOX遺伝子欠損症に対して成長ホルモンが有効との報告があり、研究が進んでいます。
SHOX遺伝子とは、身長をつかさどる遺伝子で、タ-ナ-症候群もSHOX遺伝子欠損症のひとつです。SHOX遺伝子は身長をつかさどる遺伝子で、通常は2個あり、それが1個になると低身長、2個ともないと極端な低身長、3個あると高身長になるといわれています。
予防はありません。早期診断が大事です。6歳から10歳までに治療「成長ホルモン補充療法」を開始すると成長ホルモン分泌不全性低身長症は効果があります。それより遅くても手根骨の骨端線が閉鎖されていなければ成長ホルモンの効果はあります。親御さん、医師の注意で良く見つかる病気です。こどもの身長に注意して、成長曲線のどこにいま自分の子供の身長があるか、常に注意してください。
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