【病気の知識】

便秘

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どんな病気

 大腸は腸内容物の水分・電解質の吸収によって固形便の形成と貯蔵、排泄の機能を果たす。この機構に障害が起こると便秘となる。治療の対象となるのは、腹痛などの症状、薬の副作用、他の病気の随伴症状が生じた場合だ。

 大腸には1日に約0.5~1リットルの食物残渣(ざんさ)を含む粥状の腸内容物が小腸から流入する。これが盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸と通過するうちに水分・電解質が吸収され、固形便が形成される。便が直腸に入ると便意をもよおし、腹筋の緊張などにより腹腔内圧を上昇させ、直腸の強い収縮・肛門括約筋の弛緩が起こり排便となる。

 便秘の症状は、数日に1回しか便が出ない、便が固い、便が出にくい、1日の排便量が少ない、残便感があるなど様々。ただし、便秘だからといって、すぐに治療の対象とはならない。便秘による不快感や腹痛などの症状がある場合、薬の副作用が原因の場合、他の病気の随伴症状の場合などが治療の対象となる。例えば、4日に1度の排便であっても本人にまったく苦痛がなく、健常な日常生活を送っていれば治療の対象とはならないが、逆にたった2日でも排便がないと不快感を覚える人は治療の対象となる。

 便秘の分類は以下の通りである。

(A)機能性便秘
 (1)一過性単純性便秘
 (2)常習性便秘
  (a)単純性便秘
    ・弛緩性便秘
    ・直腸性便秘
  (b)痙攣性便秘
(B)器質疾患に伴う便秘
 (1)通過障害性便秘
 (2)内分泌、代謝、神経、薬剤によるもの

 「(A)機能性便秘」のうち「(1)一過性単純性便秘」は旅行のときなどに生じるもので、あまり問題にはならない。「(2)常習性便秘」の「(a)単純性便秘」に属する「弛緩性便秘」は、腸管の運動や緊張が低下して腸内容物の輸送が遅くなるために生じる。内臓下垂の人、老人、女性などに多く見られる。また、直腸内に便があっても便意を感じないか、あるいは排便反射が起こらない便秘が「直腸性便秘」。諸事情で排便を抑制していると、慢性的に直腸の拡張して、排便反射が低下するため、このタイプの便秘になる。また痔などの痛みを恐れて便意を抑えたりしても、このタイプの便秘になる。「(b)痙攣性便秘」は過敏性腸症候群によるもので、主にS状結腸の緊張が高まり直腸への便の進入が阻害されるために起こる。この便秘は腹痛を伴うことが多く、便はウサギの糞のような状態となる。

 「(B)器質疾患に伴う便秘」のうち「(1)通過障害性便秘」は、腸管そのものの、あるいは腸管外の病変による圧迫のために管腔が狭くなり生じる。腸管そのもの病変として代表的なものは癌。腸管外の病変には卵巣腫瘍、腹腔内腫瘍などがある。全身性疾患、代表的なものとしては糖尿病、甲状腺機能低下症でも便秘が生じる。さらに、咳止め(鎮咳剤)、胃痙攣のときに使う痛み止め(鎮痙剤)、降圧剤(カルシウム拮抗薬)、抗精神薬といった薬剤の副作用で起こる便秘もある。

どんな治療法

 「(A)機能性便秘」では、強い下剤や浣腸を使用するのではなく(1~2日便意がなくても健康に差し支えはない)、まずは正常な排便リズムが回復するよう生活習慣を改善していくことからはじめる。例えば、毎朝ゆっくり朝食を摂る、便意がなくても毎朝10~15分はトイレに行くなどの習慣が重要になる。なかでもポイントになるのが食事。食物線維は便の容量が増えるため大腸の運動を刺激する。線維の多い野菜は、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、にんじん、たまねぎ、ジャガイモ、果物ではイチゴ、バナナ、スモモ、また海藻類などもそうだ。起床時に冷水や冷たい牛乳を飲むのも有効である。

 薬剤による治療では、主に膨化性下剤と浸潤性下剤が用いられる。膨化性下剤(バルコーゼなど)は、腸内容を増大し腸管を刺激する。浸潤性下剤(酸化マグネシウムなど)は、腸の水分の吸収を妨げることにより便を軟らかくする。これらが無効な場合は、刺激性下剤が使われる。これは腸粘膜を刺激し、蠕動(ぜんどう)運動を起こさせる下剤で、プルセニド、アローゼン、ラキソベロン、市販薬ではコーラックなどがある。浣腸・坐薬は、長期間、寝たきりの患者さんなど、特殊な場合を除いては使用しないほうがいい。これらを使用している限り、正常の排便リズムは戻らないからだ。

 「(B)器質疾患に伴う便秘」の場合は、その疾患の治療が最優先。以前と比べ、排便状態に変化があったり、便秘の症状が悪化したり、便が細くなってきた、便に血液が付着したなどの症状があれば、器質的疾患がある可能性が高いため、大腸内視鏡、注腸エックス線検査を含め全身の精密検査が必要だ。

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