【病気の知識】

乳腺症

この記事のキーワード : 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

どんな病気

 日本乳癌学会による「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」では乳腺症を以下のように定めています。

 「乳腺症は30〜40歳代の女性に多く見られる乳腺の良性の変化です。主な症状としては、硬結、疼痛(乳房痛)、異常乳頭分泌があげられます。乳腺症には、主として卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンというホルモンがかかわっており、閉経後に卵巣機能が低下するとこれらの症状は自然に消失します。」

 乳腺症と呼ばれる状態が性ホルモンのどのような不均衡によるものなのか、なぜこのような変化をきたすのかは、はっきりとはわかっていませんが、相対的なエストロゲンの過剰が原因の一つと言われています。また、乳腺症はさまざまな名称で呼ばれ、定義がはっきりしていません。定義がはっきりしていないので、悪性所見を認めないという意味で安易に使われている傾向があります。

どんな症状

 主に30〜40歳台の女性の月経前に、症状が出やすようです。月経が始まると症状がおさまります。乳腺に影響するホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンがあります。エストロゲンは乳汁を運ぶ管(乳管)と乳汁の骨組みである間質を増加させ、プロゲステロンは乳汁を作る部分に作用します。エストロゲンが多くなると乳房が大きくなります。月経前に乳房が張るのはこのためです。乳腺症の症状は以下のようなものが多いようです。

○乳房が張る
○乳腺の痛み:鈍い痛みです
○しこり:両側同時に見られることが多い(片側だけのことも)。形もさまざまで大小複数の玉のようなしこりが見られる(境界不明瞭なことも多い)
○乳頭の分泌物:性状は様々だが、両側性・多孔性に見られることが多い

 このような症状は月経と関連し変化します。一般的には月経が近づくとしこりが大きくなったり、痛みが出るようになり、月経がはじまると症状が軽くなります。症状に周期性があることが多いのも特徴です。

 一般的に以下のような方に乳腺症が多いようです。

○妊娠中絶をしたり、流産をくりかえしていた
○出産回数が少ない
○妊娠・出産・授乳で月経が中断されることが少なかった
○ストレスが多い
○脂肪摂取量が多い

 乳腺症のしこりだと思っていても、がんを合併する危険性はあります。しかし、乳腺症に関連したものか、そうでないのかは、不明なことが多いようです。乳腺症の方に乳がんが発生する確率は、正常の乳腺に発生する場合とほぼ同じといわれています。しかし乳腺症の中には、乳がんを発症させる危険性を秘めた病変を示す場合もあります。

 病院で乳腺症と診断された場合は、特に悪性を思わせる所見はないと理解して良いでしょう。乳がんを疑うようなしこりがある場合は、積極的に診断を受けることが必要です。乳腺症に見られるのう胞の内腔に腫瘤性病変を認める場合は、まず細胞診をして良悪性を判断します。乳腺症といわれても、しこりがだんだん大きくなったり、硬くなるようなときは、きちんと診断を受けましょう。乳腺症と診断されても、すっかり安心しきってしまうのは良くありません。年1度は定期的な乳がん検診を受けることが大切です。

どんな診断・検査

 検査の目的は悪性の病変が合併していないかを確かめるために行います(乳がんの項目も参照して下さい)。

〇マンモグラフィー(乳房専用撮影装置):乳房のためのレントゲン検査で、乳房を挟んで上から見た写真と、横から見た写真を撮ります。小さな白い粒(微細石灰化)がないかを見ます。触って分からない小さなしこりや、しこりを作らない病変を映し出すのに有効です。

〇乳房超音波検査:超音波を乳腺などの組織にあてて、その信号を画像としてモニターに映し出す検査です。乳房やその周囲にしこりや腫れたリンパ節がないかを調べます。

〇針生検:細い注射用の針を用いて行う場合と太い針を用いる場合があります。これは乳房のしこりに針を刺して組織を取り顕微鏡で見る病理検査です。皮膚を少し切ってしこりを摘出することがありますが、これは針生検で確実な診断が得られない場合に行います。

どんな治療法

 ほとんどの場合、特別な治療は必要ありません。のう胞性変化が大きい場合は針を刺して内容を吸引すると症状が消失することがあり、同時に内溶液の病理検査を施行することができます(すぐに溜まるので、治療というより診断目的です)。

 治療の対象になるのは疼痛がある場合です。一般的には消炎鎮痛剤で一時的に疼痛管理をすることが多いです。疼痛がとても強い場合はホルモン剤(エストロゲンを抑えるダナゾール)を使用することがあります。軽度の痛みには、お茶などのカフェインを控えるとよいとする報告があります。ブラジャーでの乳房の固定も疼痛緩和には有効です。また、漢方薬を使うことも多いです。

どんな予防法(気をつけること)

 エストロゲンの過剰を抑える方法として自制可能な注意すべきことしては、以下のものが挙げられます。

○ホルモンバランスを良くするために規則正しい生活をする。
○月経前には誰でもエストロゲンが過剰になりますが、ストレスもその原因になります。
○カフェインや脂肪の過剰摂取はエストロゲンを増加させるといわれています。
○海草のヨード摂取がエストロゲンを減少させるといわれています。
○禁煙

睡眠障害治療の新たな幕開け!個人に必要な睡眠の「量」と「質」を決める遺伝子を探せ
インタビュー「睡眠障害治療の最前線」後編:筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構・佐藤誠教授

前編『『人間の「脳」は7時間程度の睡眠が必要! 本当のショートスリーパーは100人に1人程度!?』』

ひとくちに睡眠障害といっても、さまざまな症状がある。1990年代後半から脳内に眠気を誘う「睡眠物質」を探す研究にスポットライトが当たり、2018年からは睡眠の質と量を決める遺伝子の解析も進められている。今回は睡眠障害について、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の佐藤誠教授に話しを聞いた。

Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長。…

鈴木龍太

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法…

郡司和夫

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリ…

横山隆