【病気の知識】

脳腫瘍2(実質脳内腫瘍)

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監修:高橋伸明/福岡記念クリニック院長・脳神経外科医
  :鈴木龍太・鶴巻温泉病院 院長/脳神経外科医


どんな病気

 神経膠腫(グリオーマ)は脳の実質内にできる腫瘍の代表的なもので、脳腫瘍全体の20%を占め、2番目に多い脳腫瘍です。脳神経細胞(ニューロン)は神経膠細胞(グリア)と呼ばれる細胞に支持されています。神経膠細胞から発生する悪性脳腫瘍を神経膠腫と呼びます。

 成人の神経膠腫の多くは、大脳半球にできます。脳卒中では症状が急激に起こりますが、脳腫瘍では症状の進行はゆっくりで、本人は軽い頭痛だけで気が付かないこともあります。神経膠腫は脳実質の中を水が紙に沁み込むようにじわじわと広がっていきます。これを浸潤性の発育といいます。脳の細胞は、生きたまま腫瘍に取り囲まれていきます。ですから神経膠腫では、症状が出た時には脳のかなり広範囲に腫瘍が広がってしまっていることがあります。

 神経膠腫にはたくさんの種類がありますが、ここでは頻度の高い多形性神経膠芽腫と星細胞腫についてお話します。

 多形性神経膠芽腫は、脳腫瘍の中で最も悪性でやっかいな病気です。脳腫瘍全体の約7.5%を占める頻度の高い腫瘍で、50〜60歳代に好発します。頭痛・痙攣が良く起こるようになり、性格変化が見られるようになります。その後、片麻痺・感覚障害・視野障害・言語障害などの局所神経症状が起こり、次第に悪化してきます。ついには脳腫瘍と脳の腫れ(脳浮腫)により頭蓋骨の中の圧が高くなり、朝に強い頭痛・嘔吐・意識障害が起こってきます(頭蓋内圧亢進症状)。進行が早いので、このような症状は数か月の間にはっきりしてきます。この腫瘍は脳腫瘍の中でもっとも悪性で、5年生存率は10%以下です。

 星細胞腫は、良性と悪性に分かれます。30〜50代に好発します。進行はゆっくりで、最初は時々起こる痙攣発作のみで、通常の検査では分からずに、てんかん発作として治療されていたり、CTスキャンで脳梗塞と似た画像となるために、内科で脳梗塞として治療されていたりすることもあります。しかし、良性の場合は数年間で徐々に局所神経症状がでてきて、脳腫瘍と診断されます。頭蓋内圧亢進症状で発症する場合はほとんどありません。良性星細胞腫は、小児や若い人の例では完治が可能な場合もありますが、成人の場合は徐々に進行し、5年生存率は70%で、悪性の場合はさらに短く20〜30%です。

どんな症状

 初期には、ほとんど症状がありませんが、軽い頭痛・ゆっくり進む性格変化・痙攣発作などを見ることもあります。かなり広範に広がった場合や、袋を形成して水が溜まった場合(のう胞形成)、出血を起こした時に、はっきりした症状がでてきます。症状は、局所神経症状(腫瘍がある部位に特異的な症状)としての片麻痺・感覚障害・視野障害、・言語障害と、頭蓋内圧亢進症状として朝に強い頭痛・嘔吐・意識障害があります。

 目の症状は視野の欠損(目の一部分が見えない)や複視(物が二重に見える)・視力低下などがありますが、患者さんはまず眼科へ行かれることが多く、脳の検査まで時間がかかってしまうことが多くあります。

どんな診断・検査

 症状がはっきりしている場合は別ですが、結局、脳の検査をしてみないとわかりません。脳神経外科か神経内科に行って脳のCTやMRI検査を行って始めて分かります。脳腫瘍が疑われた場合は、造影剤を注射してもう一回検査を行います。脳腫瘍と血管の関係を見るため脳血管造影・3D-CTA、脳の機能と脳腫瘍の関係を見るため特殊なMRIを行うこともあります。

どんな治療法

 脳腫瘍は、その種類によって治療法が異なります。種類を決定するのはCTやMRI・脳血管造影・3D-CTAなどの検査でもある程度分かりますが、腫瘍の細胞を取ってこないと最終的な診断はできません。ですから、手術で腫瘍を取ることが原則となります。

 しかし、神経膠腫の問題は、腫瘍がまだ機能している脳実質の中にあるということです。胃がんでは胃を取ることができますが、グリオーマだから脳を取ってしまおうと言うわけには行きません。脳には取れる場所と、取ると強い障害が残る場所があります。取れる場所にできた脳腫瘍は、ある程度大きく取れますが、そうでないところにできた脳腫瘍は、生検といって少しだけ取ることになります。場合によっては、全く手術しないで治療を開始する場合もあります。原則的には、多形性神経膠芽腫と悪性星細胞腫の場合は手術でできるだけ取り、その後、放射線治療・抗癌剤(テモゾロミド・ACNU)による治療(化学療法)・免疫療法などを行います。

 2014年12月、多形性神経膠芽腫に対して、口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス1型(G47デルタ)を利用するウイルス療法が開始されました。人工的に3つの遺伝子を改変し、がん細胞だけで増殖するようにし、このウイルスをがん細胞に感染させると、増殖して感染したがん細胞を死滅させ、増殖したウイルスはさらに周囲のがん細胞に感染し、次々と死滅させるようにする治療です。正常細胞に感染しても増殖しない特徴を持っています。

 良性の星細胞腫のうち、小児の小脳にできるものや、のう胞を形成するものの一部は、手術で取るだけで完全に直ります。それ以外のものは完全に取ることはできないので、手術や生検を行った後、放射線治療を行うのが一般的です。良性の星細胞腫に対する治療法は現在議論があり、放射線治療をしない場合もありますし、悪性に準じて抗癌剤まで使用する場合もあります。星細胞腫は神経膠腫の中では比較的良性といっても、完全に直るものはごく一部です。ですから、一旦治療が終わっても、外来で定期的に脳の検査が必要になります。また、痙攣を抑えるための抗てんかん薬をずっと飲むので、外来通院が必要です。このような治療を行っても、5年から10年の間に悪性に変化して再発してくる場合が多く見られます。

 放射線治療は数週間かかります。その間に頭髪が抜けたり、頭皮や顔が脹れたり、食欲が極端になくなったり、味覚が変ったりしてごく一部のものしか食べられなくなることもあります。血液を調べると白血球が少なくなっていることもあります。そのような副作用は、治療が終わると少しずつ良くなってきます。髪の毛も3か月ぐらいたつとまた伸び始めてきます。ただし、グレード2の星細胞腫に対する放射線治療は、海外での臨床試験の結果、手術診断後の早期放射線治療と再発、あるいは腫瘍増大後に放射線治療を行っても、生存期間がかわらないという結果が報告されました。

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