分煙でも完全に受動喫煙を防ぐことはできない
しかもここへきて、昨年7月に成立した改正健康増進法が“後退”の兆しを見せている。7月の段階では、多数の人が利用する建物内を「原則禁煙」としたはずが、12月になると、2階以上ある施設であれば(フロア全体を広義な「喫煙室」と見なし)「フロア分煙」を容認する方針を、厚労省が固めたのだ。その解釈によれば、加熱式タバコであればフロア内での飲食なども可能だ。
客や従業員の健康にお構いなしの後退を「愚法」と呼ばずして何と呼ぼう。
また、「分煙」の抜け道に関して、大和浩教授(産業医科大学)はこう警鐘を鳴らす。
「世界標準は屋内の全面禁煙。分煙では、受動喫煙を完全に防げません。国立がん研究センターは2016年、科学的根拠に基づき、受動喫煙による日本人の肺がんリスクは『確実』と発表しました。これにJTが反論すると、同センターは《受動喫煙は『迷惑』や『気配り、思いやり』の問題ではなく、『健康被害』『他者危害』の問題である》と返したのです」
これは、加熱式タバコでも同様だという。
「紙巻きタバコのようにタールの微小粒子状物質(PM2.5)は発生しませんが、有害なミストが発生し、それが気体に変化することで室内汚染が発生します」
昨年12 月11 日に行われた厚生労働省の「第11 回 たばこの健康影響評価専門委員会」では、『出入口の風速が0.2m/s でも禁煙区域に漏れるガス状物質濃度が上昇し、0.1m/s では漏れが顕著になった』(産業医科大学の模擬喫煙室での実験)データを提示。「会議の議事録と資料は、厚生労働省のHP に公開されています」(大和教授)とのことだ。
「禁煙を原則とするのではなく、徹底した分煙で実現すべきだ」とは、昨夏の内閣改造で新五輪担当大臣に選ばれた鈴木俊一衆院議員(「タバコ販売業者と農家の利権を守る」会の委員長)の就任時コメントだ。
また日本は、FCTC(たばこ規制枠組み条約)批准国でもある。それでも、遅々として受動喫煙対策が進まないのは誰のせい?
(文=編集部)