連鎖球菌は、対をなして、あるいはいろいろな長さの鎖状に増殖する球形ないし卵形の細菌です。ヒトの感染症の原因菌として最もありふれた細菌で、咽頭炎、扁桃炎、リンパ管炎および母児の分娩時感染など、種々の病気の原因となります。化膿連鎖球菌は急性化膿性感染を起こすほかに、リウマチ熱と急性糸球体腎炎の非化膿性続発症を後で引き起こします。
連鎖球菌は菌の細胞壁の構成成分である特異的多糖体抗原によりA〜Vに分類されます。ヒトに感染を引き起こすものの95%はA群菌によるといわれています。B群連鎖球菌が、新生児や未熟児の敗血症、化膿性髄膜炎の原因菌として注目されています。
A群連鎖球菌感染症の代表的な病気として、咽頭炎があります。 5〜15歳の小児で最も多く発生します。菌は通常ヒトからヒトへ伝播され、たいていは飛沫の散布によります。つまり、人ごみは、ヒトとヒトとの間の伝播を著しく促進することとなり、伝染しやすい環境といえます。
連鎖球菌性咽頭炎の患者は、鼻前庭部と咽頭に多数の菌を保有しています。もし抗生物質が投与されなければ、菌は症状が軽減した後も数週間ないし数か月間も上気道で存続することがあります。
しかし、保菌状態の期間が長くなるにつれて菌数は減少し、前鼻腔分泌物から菌の排出はなくなります。したがって、回復期にある保菌者は急性患者よりも、A群連鎖球菌を周囲に撒き散らすことは少ないのです。なお、A群連鎖球菌の咽頭保菌率は、学童期小児の間では15〜20%の報告がありますが、成人での保菌率はかなり低いといわれています。
潜伏期は2〜4日。典型的な症状は、急性の咽頭痛(のどの痛み)で始まり、物をのみこむ時の痛みが現れます。関連症状として、頭痛、倦怠感、発熱および食思不振が現れます。寒気もしばしば現れる症状です。悪心、嘔吐および腹痛は、小児で一般的に認められます。
●理学所見
患者は、頻脈と38℃を越す発熱があり、咽頭のびまん性紅斑、浮腫およびリンパ腺の腫れを認め、口蓋垂は、浮腫状となります。扁桃炎を合併すれば、扁桃腺は腫脹、発赤を認め、黄色、灰色、あるいは白色を呈した斑点状ないし融合した滲出物で覆われます。顎の角のリンパ節は腫脹し圧痛を認めます。
●経過
連鎖球菌性咽頭炎の経過は通常短く定型的です。熱は1週間以内、通常3〜5日以内で下がります。身体症状と咽頭痛は解熱とともに、あるいはその直後に消失します。しかし、扁桃腺とリンパ節が正常の大きさに戻るまでには、数週間かかることがあります。
●診断
連鎖球菌による咽頭炎は、他の多くの病因菌、病因ウイルスによるものと鑑別されなければなりません。臨床的な根拠だけでは、連鎖球菌性咽頭炎と非連鎖球菌性咽頭炎を区別することは不可能なため、正確な診断のために咽頭の感染菌が何であるかを判定することが必要となります。免疫学的な方法で咽頭から直接にA群抗原を検出できるようなキット製品が利用できます。
ペニシリン系、セファロスポリン系の抗生物質が第一選択となります。3〜4日の短期間で一時軽快しても再燃しますので、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの二次合併症発生防止のためにも少なくとも10日以上抗生物質を服用する必要があります。
感染者や人ごみの中にも保菌者がいると考えられます。予防には手洗い、うがいです。
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