膵臓は、胃の裏側に、横たわる様に位置した実質性臓器で、長さ15〜20cm、幅3〜4cm、重さ80〜100gの淡黄色の臓器で、その機能は、アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどの酵素を分泌してタンパク質や脂肪などの消化に関わっているとともに、インスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌し、血糖調節などの機能に関わる臓器です。
急性膵炎とは何らかの原因で、膵酵素が活性化され、膵の自己消化が引き起こされる病態です(膵臓自身が自分を消化してしまうということです)。膵の炎症、浮腫に留まる軽症急性膵炎から、呼吸困難、ショック状態(急激な血圧低下と頻脈など)、出血傾向(消化管出血など)、重傷感染症、多臓器不全(腎不全、肝機能不全、呼吸不全など)を併発し瀕死状態となり得る重症急性膵炎まで、その病状は様々です。
急性膵炎の原因として頻度が高いのは、アルコールの多飲(原因の約40%)、胆石症(原因の約20%)ですが、それ以外として、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(胆石症や膵臓疾患などを疑う場合に施行する検査)という内視鏡検査後に急性膵炎を発症したり、膵管胆管の先天的奇形(胆管と膵管との合流に異常が認められる場合など)、高脂血症、副甲状腺機能亢進症(甲状腺の脇にある血中カルシウムを調節するホルモンを分泌する小さな器官の機能亢進症)などが急性膵炎発症の引き金となることがあります。
上腹部の激しい痛みが特徴です。しばしば痛みは背部にも及びます。痛みが激しいために前屈姿勢をとることも特徴とされています。このほか、発熱、悪心と嘔吐などもみられます。重症な急性膵炎では、全身状態が不良で、意識障害、呼吸困難、消化管出血による下血、吐血、尿量の極端な減少などがみられることがあります。
急性膵炎は重症化すると、血管から水分が血管外に移行し、循環血液量が減少し、ショック状態と呼ばれる低血圧状態が引き起こされます。そのほか、肺水腫、DICと呼ばれる出血傾向(消化管出血、腹腔内出血など)などの他、肝臓、腎臓、肺の機能不全がおこり、多臓器不全状態となり、瀕死の状態にもなり得ます。また、壊死性膵炎という状態では、膵壊死組織の感染により敗血症を来すこともあります。
採血、採尿により、血液中、尿中のアミラーゼなどの膵酵素の濃度が極端に上昇している場合、急性膵炎が疑がわれます。腹部超音波検査、腹部CTなどの画像診断により、膵の腫大や膵臓周囲の液貯留などの所見が認められた場合、急性膵炎診断の根拠となります。
絶飲食の状態で点滴治療を受け、膵臓の安静をはかることが大切です。内科的治療が中心で、適切な点滴療法、膵酵素阻害剤や抗生剤の投与などが行われます。重症急性膵炎の状態に対しては、腎不全に対する血液透析、呼吸不全に対する人工呼吸管理、DICに対する各種薬物療法なども行われます。外科的に壊死性膵炎の膿瘍などを除去したり、ドレナージといって壊死感染物質を腹腔外に誘導する管を手術的に挿入したりすることもあります。
特殊な場合としては、総胆管結石による胆石性膵炎では、内視鏡的乳頭切開術を施行して、原因となっている胆石を除去することが先決です。
軽症の急性膵炎は内科的治療が奏功します。しかし、重症急性膵炎の場合には、近年、死亡率は減少しているものの、死亡率は約20%にも及びます。
予防の第一は、暴飲暴食を避けることです。また、胆嚢結石、総胆管結石と医師に診断されている場合には、一度、消化器病の専門医に相談してみるといいでしょう。また、何度か急性膵炎を繰り返しているのに、膵胆道系の精査を受けていない方も、消化器病の専門医に相談してみるといいでしょう。このような方の中に、膵管、胆管の先天的奇形や胆石症などの原因疾患が認められることがあります。
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