【病気の知識】

前立腺炎

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監修:光畑直喜/呉共済病院泌尿器科部長

どんな病気

 前立腺は、男性にのみ有する内性器で、膀胱の出口から尿道の最も奥の部分を全周にわたって取り巻いている器官です。精液の一部(15~30%)を分泌し、その分泌液は精子に運動性を与えます。すなわち卵子へ向かおうとする運動性です。また前立腺内には左右1本ずつ射精管が通っていて、精液の通路となっています。

 前立腺炎は、細菌その他が精液の通路を逆行して前立腺に炎症(逆行性感染)を生じたもので、男性性器の感染性疾患の中で最も多くみられます。青壮年期に多く、急性型と慢性型とに大別され、下記のように4種に分類されるのが一般的です。

①急性細菌性前立腺炎
②慢性細菌性前立腺炎
③慢性非細菌性前立腺炎
④プロスタトディニア(前立腺痛)

 この他に前立腺膿瘍、肉芽腫性前立腺炎があります。

どんな症状

①急性細菌性前立腺炎
 急激に悪寒(寒け)、高熱を生じます。これは前立腺炎を起こした細菌が、全身の血液に回って敗血症(菌血症)を生じるためです。同時に大多数が膀胱炎を併発することから、終末時排尿痛(排尿が終わる時の痛み)、残尿感、頻尿を訴え、さらに前立腺の炎症による腫れから尿道を圧迫して排尿困難、時には尿閉(尿が全く出ない)を起こします。内科医が腎盂腎炎と多くが誤る病気です。加えて、前立腺の直下部にあたる会陰部(えいんぶ)痛(会陰部とは肛門と外陰部の間の部位)も一般的な症状の一つです。

②慢性細菌性前立腺炎
 細菌感染による前立腺の炎症が緩徐に進行し、症状も慢性型としてあらわれ、様々な自覚症状がみられます。炎症を生じている前立腺が膀胱と隣接しているため、膀胱刺激症状として、膀胱炎と同様の症状(終末時排尿痛、頻尿、残尿感)、前立腺炎の関連痛としての陰嚢(いんのう)内容、鼠径部(そけいぶ)(股間部)、下腹部、尿道、ペニスの痛み、あるいはそれらの不快感を生じます。陰嚢内容の痛みは、そのほとんどが「睾丸が痛い」と表現します。性欲低下の訴えも少なくなく、その他多彩な症状を呈します。

③慢性非細菌性前立腺炎
 自覚症状は、慢性細菌性前立腺炎と同様です。ウィルス感染の他、クラミジア、マイコプラズマなどの性感染症としてみられることも多く、一般細菌(雑菌)による感染の併発もみられます。前立腺炎で来院される方の約90%が細菌性、非細菌性の慢性前立腺炎患者であり、慢性前立腺炎患者の約70%はこの慢性非細菌性前立腺炎患者で占められています。

④プロスタトディニア(前立腺痛)
 炎症所見が認められないにもかかわらず、前立腺炎様の症状を生じるもので、前立腺症とも称されています。

どんな診断・検査

①急性細菌性前立腺炎
 膀胱炎を合併することが多いため、尿検査では、尿沈渣(尿を遠心分離機にかけ、沈殿したもの)の顕微鏡的検査で多数の白血球(うみ)と細菌を認めることが多いです。肛門からの、直腸を通しての前立腺指診では、前立腺の著明な炎症による腫れ、高度の圧痛がみられます。この際、前立腺マッサージを強いて行うと、前立腺液中の細菌が血管を通して全身の血液に広がり、敗血症誘発の危険性があるため禁忌となっています。したがって、尿所見と直腸を通しての前立腺指診のみで容易に診断できます。起炎菌は圧倒的に大腸菌をはじめとしたグラム陰性菌(グラム染色で染色されない細菌の総称)が多く、他に種々の細菌がみられます。

②慢性細菌性前立腺炎
 膀胱炎を併発することは少なく、尿検査では異常所見は認められないことが多いです。直腸を通しての前立腺指診では、前立腺の種々の程度の腫大があり、圧痛も軽度から中等度にみられることが多いです。前立腺マッサージによる前立腺圧出液は、顕微鏡的に正常を越えた白血球数(うみ)と細菌を認めることにより診断できます。起炎菌は急性細菌性前立腺炎の場合とほぼ同様です。

③慢性非細菌性前立腺炎
 慢性細菌性前立腺炎と同様に、尿検査、直腸を通しての前立腺指診、前立腺マッサージによる前立腺圧出液の顕微鏡的検査で診断されます。尿、圧出性前立腺液中に細菌が認められないことがその条件となりますが、多くは一般細菌(雑菌)感染の合併がみられ、性感染症としてクラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマによる前立腺炎も多々みられ、必要に応じて血液検査によるこれらの抗体検査が行われることがあります。

④プロスタトディニア
 慢性細菌性前立腺炎と同様の検査です。これらの検査で炎症性所見が全く認められないのが特徴です。

どんな治療法

①急性細菌性前立腺炎
 高熱に対しては解熱剤が用いられますが、根本的な治療は抗菌剤の投与と感染した前立腺液の排出にあります。抗菌剤(化学療法)は、主としてニューキノロン系、セフェム系、ペニシリン系、テトラサイクリン系、ST合剤、注射薬としてアミノグリコシド系が用いられます。抗菌剤投与後、1~2週間で軽快した段階で前立腺マッサージによる前立腺液の排出を図ります。

②慢性細菌性前立腺炎
 抗菌剤投与と前立腺マッサージによる前立腺液排出を同時に行います。抗菌剤は、前立腺液への薬物移行が良好なニューキノロン剤(製品名はクラビット、タリビッド、オゼックス、トスキサシン、シプロキサン、フルマーク、スパラ、バクシダール、メガシロン)が最も一般的に用いられます。

③慢性非細菌性前立腺炎
 一般細菌(雑菌)感染の合併が少なくないことから、前立腺マッサージによる前立腺液排出と同時に、慢性細菌性前立腺炎の場合と同様の抗菌剤を1~2週間投与します。それ以上長い期間の抗菌剤投与は無効であるばかりでなく、いろいろな弊害もたらします。他に有効な薬剤はなく、薬物療法は対症療法のみとなります。ただし、性感染症としてのクラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマの感染が疑われる場合は、次のような抗菌剤が用いられます。クラミジアに対しては、ニューキノロン系(製品名はクラビット、タリビッド、オゼックス、トスキサシン、スパラ)、マクロライド系(製品名はクラリス、クラリシッド)、テトラサイクリン系(製品名はミノマイシン、ビブラマイシン)が用いられ、マイコプラズマ、ウレアプラズマが疑われる場合は、主としてマクロライド系(製品名はクラリス、クラリシッド、エリスロシン、リカマイシン、ジョサマイシン、ミオカマイシン、ルリッドなど)が用いられます。

④プロスタトディニア
 原因もはっきりしないため決定的な治療法もありません。多くの場合、精神科的疾患とも関連するので、泌尿科医だけでは解決できない可能性があります。

どんな予防法

 性感染症としてのクラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマによる前立腺炎の予防法としては、性行為の際のコンドームの使用は有効です。また風俗営業店でのオーラルセックスを避けることです。こうした対策以外に前立腺炎に対する有効な予防法はなく、早期受診と早期治療で早期治癒を図る以外に術はありません。

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