監修:光畑直喜/呉共済病院泌尿器科部長
腎臓は血液を濾過し、尿中に代謝産物を排泄する役割をもっています。この中で、カルシウム、シュウ酸、リン酸、尿酸などの結石形成に関連する物質も排泄されています。これらが尿路内で結晶化し増大して、結石を形成します。結石の部位により、腎尿管結石、膀胱結石に分けられますが、最近では前者が圧倒的に多くなっています。
疼痛、血尿、結石排出が三大主要症状です。疼痛は、腎結石のほとんどは痛みがなく、あっても鈍痛程度です。ところが結石が尿管生理的狭窄部位に嵌頓すると(結石が尿管の内腔より大きくて細い箇所で詰まり下降できなくなる)、疝痛(激烈な左右どちらかの側腹部痛で嘔吐を伴う場合あり)を引き起こし、患者さんはしばしば救急で受診します。血尿(顕微鏡的および肉眼的)は、ほとんどの患者さんに認められ、他の急性腹症との区別に重要です。4mm以下の結石は自分での排尿が可能であり、しばしば尿道から排尿時に排出されます。稀なケースですが、同時に両側の尿管に結石が嵌頓した場合には無尿となり、腎後性腎不全と呼ばれる重篤な病態を来すこともあります。その他感染を伴う場合は発熱を認めます。
●腹部レントゲン検査(KUB)
簡単な単純撮影であり一般の救急室でも可能。カルシウム成分を含む結石は、石灰化陰影として尿路上に認められます。
●腹部超音波検査
KUBと同様に簡便な検査であり、結石の部位大きさのみならず、腎盂尿管の拡張程度も判定できます。
●排泄性尿路造影(IVPもしくはIVU)
尿路排泄性の造影剤を静脈注射して、経時的に撮影して尿路の形態と機能をみる検査です。通常救急室では行いませんが、尿路結石の治療方針の決め手になる検査です。
●CTスキャン
カルシウム成分を含まない結石は、結石影をとらえにくい場合がありますが、CTスキャンではよく観察することができます。尿路上皮腫瘍との鑑別にも有効です。
小さな結石で自力での排尿が期待される場合は、沈痛、水利尿などの保存的治療を行います。自力での排尿が困難な場合、疼痛が激しい場合、感染を伴う場合および腎機能が傷害される可能性のある場合には、次のような治療が行われます。
●ESWL:体外衝撃波結石破砕術
専用の結石破砕装置を用いて、患者さんの体外で衝撃波を発生させ、これを体内の結石に焦点を絞り収束させ、結石を破砕する方法です。本邦では、1987年に健康保険の適用となって以来、尿路結石の治療法として最も標準的なものとなりました。装置は、大病院や地域拠点病院の泌尿器科に導入されており、小規模病院や医院から患者さんが紹介されています。数日の入院を要することが多いですが、最近では装置の高性能化および技術の進歩もあって、麻酔を行うことなく日帰り治療を行う施設も増加してきました。
●TUL:経尿道的尿管結石摘出術
細径の尿管鏡という特殊な内視鏡を尿道→膀胱→尿管に挿入して、尿管内の結石を観察しながら砕石装置で破砕し、除去する手術です。手術室で麻酔を行い、数日の入院を必要としますが、治療効果が確実なこと、ESWL単独では治療困難な例にも有効なことが特長で、しばしばESWLと組み合わせて行われています。
●PNL:経皮的腎結石摘出術
TULが尿管結石に行われるのに対し、腎内の結石に対しては、背部に1cmほどの腎瘻という孔を作成し、ここから腎盂鏡という特殊な内視鏡を挿入し、結石を観察しながら砕石装置で破砕する方法です。
●開腹手術
ESWL、TUL、PNLなどが導入される以前は、切石術と呼ばれる開腹手術が全身麻酔下で行われていましたが、現在では特殊なケースを除いて行われていません。
●溶解治療
尿酸結石やシスチン結石のような特殊なケースにある種の薬剤が有効ですが、一般のカルシウム結石に対しては、「溶かす薬」というものは未だ存在しません。
結石の大部分は、原因不明(特発性)で確実な予防法はありません。一般的には充分な水分を摂取することが必要です。最近では、動物性蛋白や脂質の過剰摂取が尿路結石形成を助長すると述べた報告がなされています。
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