監修:光畑直喜/呉共済病院泌尿器科部長
膀胱は、下部尿路の代表的な臓器です。腎臓から尿道へ尿が排泄される道筋は尿路と呼ばれ、腎臓から尿管までを上部尿路と膀胱から尿道までの下部尿路の2つに分けられます。下部尿路には尿を一定量貯留し、放出する役割があります。下部尿路の形態は、男女で異なり、疾患にも男女差があります。膀胱炎は、膀胱に起こる感染性疾患ですが、大別すると、急性膀胱炎、慢性膀胱炎、その他の膀胱炎とに分けられます。
●急性膀胱炎
生殖年齢の女性に多く、原因菌は、圧倒的に大腸菌が多いことが知られています。菌は、患者の身体他部から持ち込まれることが多く、その経路は、しばしば尿道口よりの逆行性感染となります。従って尿道の短い女性に多いということになります。男性で急性膀胱炎が起こったら、急性前立腺炎に合併したものか、基礎疾患(前立腺肥大症、尿路性器癌など)の存在を考えるべきです。原因菌は、薬剤に耐性を示すものが少なく、抗菌剤により、比較的容易に治療されます。
●慢性膀胱炎
慢性膀胱炎は、基礎疾患があって起こってくることがほとんどです。基礎疾患としては前立腺肥大症や膀胱結石、尿路結石、糖尿病、腫瘍などがみられます。治療には、基礎疾患に対する検索が必要になります。経過が長く、難治性なのが特徴です。
●その他の膀胱炎
列挙すると、間質性膀胱炎、放射線性膀胱炎、抗癌剤による膀胱炎、小児出血性膀胱炎、トラニラスト膀胱炎、抗酸球性膀胱炎などがあげられます。
排尿痛、頻尿、尿混濁が三主徴と呼ばれます。排尿痛は、多くの場合終末時(排尿の終わり)に著明です。頻尿は、昼夜ともにあり、残尿感を伴いひどい場合は、数分毎に尿意を感じます。尿混濁は、膿尿(尿中に白血球をみる)、細菌尿が主体ですが、血尿のこともあります。一般的に発熱は認めず、血液検査でも異常を認めず、排尿時以外の膀胱痛も存在しないことが特徴です。症状は、急性膀胱炎が慢性膀胱炎より著明で、慢性膀胱炎では、症状が長い期間持続しますが、症状が軽いことが多いです。
●触診:触診上、膀胱部圧痛(膀胱部を圧迫したときの尿意)を認めます。
●検査所見:尿沈渣で、白血球および細菌を多数認めます。血液検査で全身の炎症所見を認めず、特徴的な画像診断所見もありません。
急性膀胱炎に関しては、尿中排泄型の抗菌剤ならば、ほとんど有効です。的確な治療を行えば、すぐに治り予後は良好ですが、治療の時期が遅れたり、治療が不十分だと、腎盂腎炎になったり、再発、再燃を来したりする場合があるので、注意が必要です。慢性膀胱炎では、原因疾患の治療が必要になることが多く、しばしば治療に難渋します。
完全に予防する方法はありませんが、排尿を我慢しない、水分摂取に努める、局所を清潔に保つ、過労ストレスを避ける、などが有効です。
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