近年、胃粘膜内などの消化管内に常在するピロリ菌(Helicobacterpylori)が、さまざまな胃・十二指腸疾患と関わりを持っていることが明らかになってきた。検査を受け、胃潰瘍、十二指腸潰瘍と診断されたときには、ピロリ菌検査が施行されているのかどうかチェックする必要がある。
平成12年11月1日より、胃潰瘍・十二指腸潰瘍に関して、ピロリ菌の診断検査が保険適応となった。しかし、「どのような胃・十二指腸疾患とピロリ菌が関連を持つのか?」「どのようにして胃十二指腸のピロリ菌感染を診断するのか?」「ピロリ菌の除菌治療の対象疾患とは?」「どのようにピロリ菌を除菌治療するのか?」などに関しては、いまだ医療現場でも問題を抱えている。
ピロリ菌との因果関係が強く主張されている疾患は、なんといっても胃潰瘍と十二指腸潰瘍だ。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも、「ピロリ菌除菌療法が勧められる疾患」と分類されている。この他にピロリ菌との関連が疑われている疾患として、「低悪性度MALTリンパ腫」という病気がある。これは悪性リンパ腫の一種と考えられている。低悪性度MALTリンパ腫は胃がんとは異なる病気で、その50%から80%の症例がピロリ菌の除菌治療により改善がみられることがわかってきた。また、胃がん、胃ポリープ、慢性胃炎などの病気とピロリ菌との関連も取りざたされている。
ピロリ菌感染の有無の診断方法は、大きく分けて、内視鏡検査の時に胃の組織を採取(生検)して診断する方法と、これを必要としない診断方法とに分類される。前者の診断方法としては、顕微鏡でピロリ菌を確認する方法や、培養(少々時間がかかるものの診断が確実)といって、菌を繁殖させて検出する方法などの他に、迅速ウレアーゼ試験(ピロリ菌のもつウレアーゼという酵素により検出する方法)がある。後者の診断方法としては、尿素呼気試験、血液、尿、唾液などのピロリ菌の抗体を調べる方法などがある。
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