監修:西郷和真/近畿大学医学部附属病院講師・神経内科
何らかの原因によって、顔の筋肉をつかさどる神経に障害が起こり、顔面が麻痺してしまう病気です。麻痺は、おもに顔の片側に現れます。顔面神経麻痺のなかでも、いちばん多くみられるのは、ベル麻痺とよばれる末梢性顔面神経麻痺です。突然発症し、原因不明と考えられていますが、ストレスや冷たい風に当たったあとに発病することが多いようです。最近ではヘルペスウイルスとの関係が言われるようになっています。
また、脳卒中に伴う中枢性顔面神経麻痺では、脳卒中が起きると同時に顔面神経麻痺も生じます。特殊な例では、ウイルスが原因で起きるものもあります。そのほか頭部外傷、脳腫瘍によっても起きることがあります。
顔の表面の筋肉を動かすことができませんから、麻痺が起きた側の顔には力が入りません。そのため、まぶたが完全に閉じられない、麻痺側の口角が下がる、口笛がふけない、食べた物やよだれが麻痺した唇側から漏れてしまうなどの症状がみられます。また、味覚異常が現れたり、耳の聞こえ具合も悪くなったりすることがあります。
ごく初期には顔面の違和感やしびれ感がみられますが、数時間から半日で症状が進み、顔の半分がまったく動かなくなってしまうこともあります。そのため所見(診察)による診断は簡単です。通常は、念のために脳のCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断)を行います。症状によっては脳血管撮影が必要なこともあります。
また、顔面神経麻痺とまぎらわしい症状もありますので、鑑別診断が必要です。たとえば、まぶたの周りがピクピクすることがありますが、これは眼瞼痙攣(けいれん)と呼ばれるもので、顔面神経麻痺とは関係ありません。健康な人でも疲れたときによくみられます。
一方、顔面スパスムスという病気は、顔半分が繰り返し痙攣し、いつもしかめっ面をしているような表情になります。これは、顔面神経がずっと刺激を受けることによって起こってくる症状で、脳外科的な手術や薬を使って治療します。
ベル麻痺のほとんどは、発病から2~3週間くらいで自然に治ってしまいますが、なかには治りが悪いこともあります。その場合は、副腎皮質ホルモンを使用したり、星状神経節ブロック(頚のところにある神経に麻酔薬の注射などで刺激を与える)と呼ばれる治療を行います。これによって脳へ行く血液の流れがよくなるので、治療効果が期待できます。顔面マッサージも効果的です。ただし、これらの治療を行っても後遺症が残ることがあり、まぶたを完全に閉じられなかったり、口角が下がってしまったままになることがあります。
最近では帯状疱疹の治療に使用するアシクロビル(ゾビラックス)などの抗ウイルス剤を使用することもよくあります。脳卒中によるものは、脳卒中の治療が優先されます。
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