頭の両側にある頭蓋骨のことを側頭骨といいます。この骨の中には、外側から外耳、中耳、内耳とあり、脳へとつながっています。
そのなかの内耳は、三半規管や前庭というバランスに関わる部分と、蝸牛(かぎゅう)という聞こえをつかさどる部分から構成されています。何らかの理由により、三半規管や前庭が障害されるとめまいが生じ、蝸牛が障害されると難聴や耳鳴りが起こります。
メニエール病の発病には、内リンパ腔の拡大(内リンパ水腫)が関係しているといわれており、三半規管、前庭、蝸牛は内リンパ腔によってつながっていることから、メニエール病になると難聴や耳鳴りなどに伴ってめまいも起こります。
内リンパ水腫の発症については、ウイルス感染説や自己免疫説など、さまざまな理由が考えられていますが、はっきりとは判っていません。内リンパ水腫は、多くの場合、片耳に起こりますが、ときには両耳に生じることもあります。
メニエール病のめまいは、きっかけもなく突然起こり、30分から半日くらい続きます。ぐるぐる回る回転性のめまいで、発作中には、吐き気、嘔吐、冷や汗、顔面蒼白、頻脈などの自律神経症状がみられます。同時に、難聴や耳鳴り、耳がつまった感じがする(耳閉塞感)などの蝸牛症状も伴います。
蝸牛症状は、めまいの始まる前後から出現もしくは強まります。そして、めまいが治まると同時に、消失もしくは軽くなります。めまいの発作は繰り返し起こり、その間隔は数日から数年まで、人によって異なります。
また、繰り返すたびに難聴が進行し、大きな音や高い音が響いて聞こえる聴覚過敏も生じてきます。
純音聴力検査
一般的な聞こえの検査です。病気の初期には、発作時に低音域のみ聞こえにくくなりますが、発作がおさまると正常に戻ります。発作を繰り返すうちに、全周波数の聴力低下がみられ、発作のないときも聴力低下が残るようになります。最終的に高度難聴に進行する場合もあります。
平衡機能検査
バランス機能の状態をみる検査です。めまい発作時には、聞こえの悪い耳のほうに眼球が振れる眼振がみられますが、発作が軽くなると、目の振れは逆向きに変わります。このような眼振は、フレンツェル眼鏡という特殊な眼鏡をつけて観察するとよくわかります。耳の穴に水を入れてバランス機能を調べる検査を温度眼振検査といいます。この検査を行ったとき、めまいを感じて眼振が出現するのが正常な状態ですが、メニエール病が進行すると、温度眼振反応が低下したり消失します。
補充現象を調べる検査
音の強さをわずかに増加させても、その音を非常に大きく感じる現象のことを補充現象といいます。メニエール病にかかっている人の多くは、補充現象検査をすると陽性となります。補充現象を調べる検査としては、SISIテスト、ABLBテスト、自記オージオメトリーなどがあります。
内リンパ水腫を調べる検査
蝸電図、グリセロールテストで内リンパ水腫の有無を判定します。蝸電図は、小さな電極を外耳道もしくは鼓膜の奥に置き、音刺激を与えたときの内耳の電気反応をみるものです。電極を設置する際には、イオントフォレーゼという方法で耳の中を麻酔します。これは、子どもにも行える麻酔法です。イオントフォレーゼは、鼓膜切開の前に行うこともあります。グリセロールテストでは、利尿作用のあるグリセリンを飲んでもらい、その3時間後の聴力改善の有無を評価するものです。グリセリンの副作用により、頭痛や吐き気が生じることがあります。
薬物による治療が第一選択となります。メニエール病の原因と考えられる内リンパ水腫に対する治療には利尿剤投与が中心になりますが、ステロイド剤が使われることもあります。また、内耳の細胞や神経の活動を正常化する目的で、ビタミン剤や血流改善剤、代謝賦活剤などが用いられます。
一方、めまいに対する恐怖心は自律神経症状をさらに悪化させるため、安定剤を使用したり、吐き気や嘔吐に対しては制吐剤を用います。
薬物治療でめまい発作がおさまらず、生活に支障をきたす場合には、手術療法を行います。メニエール病の手術には、内リンパ嚢開放術、内耳破壊術、前庭神経切断術などがあります。
メニエール病のめまい発作を完全におさえるような予防法は、残念ながらありません。しかし、肉体疲労やストレスが発作の引き金となることが多いため、規則正しい生活を送り、寝不足にならないよう注意することが必要です。また、塩分や水分の取りすぎは、内リンパ水腫を悪化させるため、控えるようにしましょう。
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