10~15%の女性が陥る産後うつ 日本の産後うつ病対策はどうなっている?

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産後のうつは特別なことではない

 米国のCCD(疾病管理予防センター)によると、米国の妊産婦のおよそ9人に1人が産後うつ(PPD)を発症している。また、国立成育医療研究センターによれば、2015年~16年の2年間に妊娠中または産後1年未満の産後うつ病の自殺者は102人に上っている。

 産後うつ病になると、悲観的になり、興味の喪失、自殺念慮などを伴うため、母子の絆を妨げるだけでなく、自分自身や乳幼児を傷つける恐れもある。

FDAは産後うつ病の新薬を初承認

 今年3月19日、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、産後うつ病に対する静脈内投与薬ブレキサノロンを初承認した。FDAはブレキサノロンを優先審査する画期的新薬(BT:ブレイクスルー・セラピー)に指定していた。

 ブレキサノロンの第II相プラセボ対照二重盲検臨床試験によると、中等~重度の産後うつ病患者(375人、分娩後6カ月以下の18~45歳)を対象に60時間にわたってブレキサノロンを静脈内に投与した。その結果、2日以内に患者に迅速な作用発現と耐久性を示す治療応答が得られ、ブレキサノロンの有効性が確認されたという。

 だが同時に、ブレキサノロンは、眠気・口渇・意識喪失・紅潮などの副作用を伴う事実も判明した。

 したがってFDAは、過度の鎮静状態や意識喪失を監視するため動脈血酸素飽和度(SpO2)を継続的に測定し、副作用管理を義務づけるREMS(リスク評価緩和戦略)を行う認定医療機関が使用するように勧告している。

 なお、現時点では確定していないが、FDAが承認したブレキサノロンは、国内の治験を経て日本でも臨床応用される可能性もある。

およそ10~15%の女性が陥る産後うつ病とその対策

 産後うつ病(PPD)とは、分娩後2週間以上にわたって続き、QOL(生活の質)やADL(日常生活動作)を阻害する抑うつ症状のことだ。分娩後の女性のおよそ10~15%に起こり、産後の数週間から数か月にわたって、気分が落ち込む、不安になる、眠れない、気力が失せる、集中力が下がるなどの症状が続く。悪化すれば、自傷、自殺、幼児虐待を招くリスクなども高くなるといわれる。
 
 具体的な症状としては、コントロールできない極度の悲しみや罪悪感、不眠症や過眠、食欲喪失や過食、易刺激性や怒り、頭痛や身体の疼痛、疲労感、子供への非現実的な心配や無関心、育児不能感や母親不適切感、乳児を傷つける、希死念慮。不安やパニック発作などの合併症を伴うこともある。

 治療は、抗うつ薬の投与のほか、精神療法、小運動療法、光療法、マッサージ療法、鍼治療、ω-3脂肪酸補充などが有効とされる。治療をしなかった場合、自然に解消することもあるが、慢性うつ病に移行する危険性もある。再発のリスクは約1/3~1/4だ。

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