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【連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」第34回】

睡眠不足や睡眠障害で腰痛に? 免疫機能の乱れから痛みに敏感に……

睡眠不足が「痛み」に敏感にさせる

 これらのことから、睡眠の不足や障害が腰痛に影響していることは間違いなさそうだ。さらに、生活習慣病やがんにまで影響するのだから、睡眠の重要性が改めて認識したい。

 では、なぜ睡眠不足が生じると腰痛の回復が遅れたり、腰痛が悪化したりするのか? じつはまだ、その因果関係はすべてが解明されていない。

 ただし、2015年の論文によると、睡眠不足から「免疫機能」の乱れが生じて<痛みの閾値(しきいち)>が下がったり(今まで感じなかったわずかな刺激で痛みを感じる=痛みに敏感になる)、炎症が治りづらくなったりするからではないかと推測されている。

眠れないのは「動いていない」から

 私が勤務する病院でも、よく眠れない患者はたくさんいる。特に高齢者だ。

 その理由はさまざまだが、ひとつは「動いていない」からだ。動いていないから疲れないし、眠くもならない――という悪循環に陥っている。その理由は、腰痛があって動きたくないというケースもある。単純に日中の活動量が少ないという場合もある。

 動けないほどの腰痛であれば通院できないだろう。そのような人には、腰痛が悪化しない程度になるべく動くように指導する。また、病院での理学療法も<受け身>ではなく、自ら動く運動療法を処方する。

 もちろん、前述の「腰痛と睡眠の関係性」を説明し、良質な睡眠には、日中の活動量を確保して適度な疲労が効果的であることを伝える。

 眠りの悩みを解決することで、<腰痛の悪循環>を断ち切ることも可能だ。また、良質な睡眠は、腰痛改善以外にも<生活の質>もアップするはずだ。
(文=三木貴弘)

連載「国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」バックナンバー

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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