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【連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」第34回】

睡眠不足や睡眠障害で腰痛に? 免疫機能の乱れから痛みに敏感に……

睡眠不足や睡眠障害で「腰痛」に!? 「免疫機能」の乱れから痛みが敏感に……の画像1

「睡眠」が急性腰痛(ギックリ腰)にも慢性腰痛にも影響を及ぼしている(depositphotos.com)

 私たちは毎日<3分の1>を眠ることに費やしている――。いや、費やすことが理想だが、実際には満足に眠れていない人が多い。また、日本人の5人に1人が睡眠に何らかの問題を抱えているとのことだ。

 そして、日本大学医学部精神神経医学教授の内山真医師が発表したデータによると、睡眠に関連する経済損失は3兆5000億円にのぼるといわれている。

 経済損失の中には医療費の増大も含まれているが、病気と睡眠不足との関連は次々と明らかになっている。たとえば、アルツハイマー病、がん、糖尿病、精神疾患などは睡眠障害との関連性が論文で発表された。そして、腰痛に関しても睡眠不足(障害)との関連性が報告されている。

「睡眠」がギックリ腰や慢性腰痛に影響を

 たとえば、ギックリ腰に代表される急性腰痛――。

 2014年に発表された論文「Poor sleep quality is strongly associated with subsequent pain intensity in patients with acute low back pain.」によると、1246名に対して「睡眠」と「腰痛」の強さの関係性を調査した結果、「睡眠の質の低下と腰痛の強さは相関する」ことがわかった。

 また、慢性腰痛に関する報告もある。2017年に発表された「Persistent and developing sleep problems: a prospective cohort study on the relationship to poor outcome in patients attending a pain clinic with chronic low back pain.」では、3カ月以上続く腰痛(慢性腰痛)患者682名に対して、睡眠の質と腰痛の改善度を半年にかけて調査した。

 その結果、睡眠不足や障害があると慢性腰痛が治っていなく、睡眠がきちんととれていると腰痛は改善傾向にあることが判明――睡眠と腰痛の回復具合は関連していることが示唆されたのだ。

 さらに2014年の研究「The bidirectional relationship between pain intensity and sleep disturbance/quality in patients with low back pain」では、腰痛と睡眠障害はどちらの方向にも関係があることが報告された。

 つまり、「睡眠障害が腰痛をより悪化させる」し「腰痛の持続が睡眠障害を引き起こす」というもの。ただし、この研究は1週間という短期間なので、より長期的な調査が必要であろう。

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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