70代、80代でも筋肉量はアップする!
では、心肺機能での効果は明らかだが、筋量や筋力についても同じことはいえるのか。皆さんは「サルコペニア」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
個人差はあるが40歳前後から徐々に筋肉量の減少傾向が見られ、加齢に伴ってその速度は加速化していく。とくに高齢者は著しく、1年で5%以上の筋肉が減少することもある。このような加齢による筋肉量の下降現象をサルコペニアと呼ぶ。
サルコペニアは、ギリシア語で「骨格筋の減少」を意味し、サルコ(筋肉)とペニア(減少)の造語だ。ところが近年、さまざまな研究の結果、筋力トレーニングを行うと年齢に関係なく成長ホルモンの分泌が活性化され筋量が維持増進されると報告されている。
老化の原因のひとつに挙げられるが、成長ホルモンの分泌低下だ。数年前にスロートレーニングでも成長ホルモンの量が増え筋肥大効果を得ることが判明し、高齢者の介護予防運動として「スロトレ」が導入された経緯がある。
そして、成長ホルモンをより効率的に分泌させるには、筋肉量の多い部位、つまり下半身を鍛えることが有効だとわかっている。
筋トレは一過性のものではなく「生涯スポーツ」
私のこれまでの経験からも「筋肉の発達は何歳まで可能か」と問われれば、「生涯可能だ」と答えるだろう。レベルの違いはあっても、70代、80代からでも筋肉を発達させることは可能だ。高齢であっても健康体であれば、筋力をアップし、筋肉を大きくすることもできる。
こう断言する根拠には、私のクライアントにもいたからだ。働き盛りに仕事が多忙でトレーニングを中断したものの、定年後に運動を再開して、70歳を越えてから筋肥大している。
最初は腕立て伏せやスクワットで体を慣らし、だんだんと負荷を上げ、いまでは自分の体重以上を持ち上げるほどだ。ヒトは加齢とともに老化が進み、体が衰えるが、それを筋トレで遅らせることができるという実例である。もちろん、専門家の指導の下、適正な種目、負荷で安全に行うことが前提だ。
ボディビルダーも、世界レベルでは筋肉がピークに達するまでは相当な期間を要する。他のスポーツ競技でも、さらに科学的なトレーニングに取り組めば、より長く現役で活躍できる選手を多く輩出できるだろう。
前述のランニングエコノミーの報告でも、ランニングは下半身を多く動かすため、成長ホルモンの分泌アップに寄与しているのかもしれない。最近は、筋トレの効果にカラダの見栄えのよさばかりを求めがちだが、一過性のもので終わらせては残念だ。
筋トレは本来、ゴルフのように何歳になっても続けられる「生涯スポーツ」なのだ。健康増進やアンチエイジングのひとつとして続けてもらいたい。