無治療が招いた男性(56歳)の死亡ケース(次頁にはグロテスクな画像が含まれます。閲覧にはご注意ください)
掲載画像は、56歳・男性の例である。8年前より「高血圧」を指摘されていたが、「無治療」だった。競輪観戦中に突然「意識障害」をきたして倒れ、救急車で搬送されて来た。
入院時、意識はほとんどなく、収縮期の血圧は実に300mmHgだった。
頭部単純CTで、右大脳基底核に「出血巣」があり、脳室内にも出血が及んでいた。その結果、脳が反対側に押しやられるような変形(正中偏位)を認めた。脳圧を下げる薬が投与されたが、まもなく死亡した。
剖検時の脳の割面(=水平断)肉眼像(=ホルマリン固定後)を示す。右被殻部を中心に径5cmの巨大な血腫が形成され、外側はくも膜下、内側は脳室内に出血(脳室穿破)が波及している。
脳出血で右大脳半球は腫脹し、左側に著しくシフトしているのが判る。血腫の後部に「視床」が残っており、「外側型脳出血」と判定される。
高血圧性脳出血は、高血圧のコントロールを心がければ、脳卒中のなかでも最も予防しやすい疾患である。降圧剤はきちんと飲み続けることが大切。飲んだり飲まなかったりすると、かえって危険が増しかねない。
運悪く、脳室穿破をきたした脳出血の場合、このケースのようにきわめて不良である。多くの場合、手術はできない。
(文=堤寛)