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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第38回】

喘息治療薬「テオフィリン」の大量服用は生命に危険が及ぶ急性中毒症を招く 

テオフィリンは量服用で重篤な急性中毒症を誘発しやすい

 成人気管支喘息患者における通常のテオフィリンの薬用量は、400mg/日である。至適血中濃度は10~20μg/mlときわめて狭い。

 中毒発現濃度は20μg/ml以上で、嘔気、嘔吐、頭痛、下痢、動悸、気分不快などの症状が数時間後には発現する。重症中毒濃度は80~100μg/mlで、血圧低下、けいれん、重篤な不整脈が出現し、諸外国での報告によると、60μg/ml以上での死亡例も存在するとのことであった。私が経験した上記症例では、病院搬送時に200μg/ml前後と異常高値を呈していたため、生命の危険が極めて大きかったものと思われる。 
 
 テオフィリンは叙放剤であるため、常用量を服用しても血中濃度は、比較的、長時間維持される(半減期は3~20時間)。大量服用例では、私が経験した症例の如く、9時間後にも異常高値を持続しやすい。

 本中毒が疑われたケースでは、早期に血中濃度を測定し、直接血液灌流を開始する必要がある。濃度測定や血液灌流治療が不可能な施設に搬送されたケースでは、できるだけ早期に実施可能な医療施設に転送すべきである。 

 本症例の如く患者が、処方されたテオフィリンをため込んで、一度に大量服用するケースは、精神科疾患を合併している症例で多く認められる。このような不幸な結果を招くのを避けるためにも、可能な限り本人以外の服薬管理者の存在が必要であろう。

連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」バックナンバー

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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