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【シリーズ「中村祐輔のシカゴ便り」第19回】

リキッドバイオプシーは「がん医療変革」につながる!臨床応用可能であることを示した点が大きい

日本でリキッドバイオプシーを理解しない研究者や医師が多い

 大腸がん、乳がん、肺がん、卵巣がんの合計200名の患者さんを調べた結果、第1・2期でも、それぞれ71、59、59、68%で遺伝子異常(遺伝子変化ではなく、がんに関連すると考えられる異常)を持つDNAが検出された。肺がん、卵巣がんは第1期でも45%(29名中13名)、67%(24名中16名)で異常DNAが検出された。発見が遅れがちな卵巣がんや第2期でも再発率の高い肺がんではこの数字は臨床的に非常に重要な意味を持つ。

 これらの異常は、がん組織中でも確認されているので信頼性は高い。また、血漿に漏れ出てくる異常DNAの量が多い大腸がん患者では、再発率も高く、予後が悪かったと付け加えられていた。これらの患者さんには、積極的な術後化学療法が必要だ。

 しかし、日本でリキッドバイオプシーの話をすると、聞きかじりの知識で難癖をつける研究者や医師が多い。検出できない30〜40%はどうするのだという声が、幻聴のように聞こえてきそうだ。

 ベストでなく、欠けていることを挙げらって自分は偉いと自己満足しているだけで、今よりベターであることを判断できないのだ。自分ができないことを他人がやると面白くないと思う潜在意識が、科学的に評価する目を曇らせている。ある意味では、日本で伝統的に培われた文化なのかもしてない。

最小限のマンパワーで大量のスクリーニングを行うことが可能だ

 この方法が臨床現場で確立されれば、がんのスクリーニング体制が大きく変わるし、血液採取で済むだけなので、当然ながらスクリーニング受診率は一気に向上すると思われる。さらに、超早期再発発見・超早期治療が治癒率を上げる可能性を秘めているのだ。

 しかし、それぞれのプロセスにノウハウがあり、片手間でできるものではない。何をするにもそうだが、科学的な素養と評価する目が必要だ。こんな状況なのに、いったい誰のために研究し、誰のために国費を費やしているのか、改めて問いたい。

 現状のパワーで、必要な日本人すべてが、画像検査や内視鏡検査を受ければ、医療現場は間違いなく破綻する。しかし、これらの検査は自動化が可能だし、アルゴリズムを含めたインフォーマティクスの体制さえ整えれば、最小限のマンパワーで大量のスクリーニングを行うことが可能だ。

 隣国・韓国では、サムソンがこの分野に乗り出している。日本は大御所を含む99%の人がそうだといわないと物事が動かない。日本のゲノム医療をここまで遅らせてきた元凶に目を向けようとしないと声をあげない。なぜ、患者さんたちや家族は、声をあげないのか?

『中村祐輔のシカゴ便り』(http://yusukenakamura.hatenablog.com/)2017/0824より転載

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中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長、2012年4月〜2018年6月、シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長を経て、2016年10月20より現職。2018年4月 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)プログラムディレクターも務める。

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