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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第26回】

大口病院の「点滴殺害事件」に見る「界面活性剤中毒」の恐怖! 家庭用の石鹸や洗剤にも使用


 

クレゾール石鹸液による自殺未遂の実例

 筆者は20年前、自殺目的でクレゾール石鹸液を経口摂取した79歳女性例を診察した経験がある。患者は早朝に50%クレゾール石鹸液を自宅から持ち出して、先祖の墓前で80mLを服用して自殺をくわだてた。

 服用から2時間30分後に、墓地を通行していた人に発見され、救急搬送された。意識不明で、血圧は低下し、呼吸苦、チアノーゼ、けいれんを認めていた。

 呼吸、循環管理、大量の点滴を行い、血液透析の一種である血液灌流法を3時間行い、クレゾールの血液中の濃度は317.4μg(マイクログラム)から102.5μgマイクログラムまで減少した。その後48時間後には9.9μgまで低下し、症状は緩和した。幸い10日後に退院できた。

 石鹸液であるので界面活性剤が含まれているが、成分の分析はできなかった。クレゾール石鹸液は、60mL以上飲むと死亡することがある。また血中濃度が100μg以上で致死的であるといわれているが、この症例は無事に生存できた。

連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」バックナンバー

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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