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【シリーズ「オルガスムのサイエンス 性的快楽と心身と脳の神秘を探る!」前編】

女性のオルガスムの感覚は十人十色!男性は週3回以上の性交で心臓発作、心筋梗塞が半減

「吸ってくれ、吸ってくれ、僕は燃える、僕は燃える!」

 ちなみに、イギリスのロマンス派の詩人パーシー・ビッシュ・シェリーは「オルガスムは恋人たちが愛する死」であるとインスピレーションして詩を書いた。シェリーは『フランソワ・ラバイヤックとシャルロット・コルデーの祝婚歌と思われる断片』の中で「吸ってくれ、吸ってくれ、僕は燃える、僕は燃える! いかなる生もかのような死には及ばず」とオルガスムの暗喩を大胆にしたためている。

 これを裏づけるように、『自我とエス』を著した精神分析学者のジークムント・フロイトは、オルガスムによる性的満足はエロス(生の本能)を使い果たし、タナトス(死の本能)へ移行すると語っている。

 また、『裸のサル』の著者デズモンド・モリスは、女性がオルガスムに達しにくいのは、忍耐力、気配り、想像力、知性などの特質を持った男性を選択できるように有利に進化してきた性淘汰の結果に他ならない」と論破している。

 さらにキャサリン・ブラックリッジの『ヴァギナ 女性器の文化史』によれば、古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、オルガスムによって子宮頸部が吸角のように働き、精液を吸い寄せて受胎を助けている、つまり、骨盤筋肉の収縮が陰茎を締め付けるため、男性のオルガスムと射精が引き起こされると考えていたと指摘している。

 続いて『精子戦争』を著した進化生物学者のロビン・ベイカーは、女性が排卵中にオーガズムに達しやすいのは、進化的により適した男性の精子を受け取るための女性の性戦略であり、オルガスムが繁殖力の増強につながっていると説明している。

 長々とオルガスムをテーマに世界中を散策してきた。次回の「オルガスムのサイエンス」後編は、オルガスムと薬剤、ドラッグ、薬草の関わりについて話そう。

*参考文献:『オルガスムの科学』、『クィア・サイエンス 同性愛をめぐる科学』『女と男 最新科学が解き明かす性の謎』ほか

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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