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【連載「死の真実が“生”を処方する」第30回】

ダニに刺されて死ぬ?つつが虫病、ライム病、日本紅斑熱、重症熱性血小板症候群(SFTS)ダニが原因の恐ろしい病気

1割以上が死亡! 新たな恐ろしい病気

 平成21年頃から中国の農村部で、発熱、嘔吐、下痢、白血球の減少や血小板の減少を特徴とする病気が発生し、罹った人の1割以上が死亡したことが分かりました。

 「重症熱性血小板症候群(SFTS)」と呼ばれるもので、ウイルスが原因です。いくつかの動物に、このウイルスが含まれていたのですが、その動物の体液を吸ったダニが人を刺すことで病気を媒介しているのです。

 平成24年秋、日本国内に住んでいる海外渡航歴のない中年女性が、SFTSにかかっていることが判明。わが国で初の発生が報告されました。厚生労働省では、病気の発生状況の把握や蔓延予防に向けた対策を取るため、平成25年3月からSFTSを感染症法に基づく医師の届け出疾患に追加。

 つまり、診断した医師は、直ちに最寄りの保健所にその事実を報告しなければならないのです。

 SFTSは24年の秋以降、九州、中国、四国地方で患者が発生し、平成25年5月末日時点で16人がかかり、そのうち、なんと9人が死亡しました。発生が九州、中国、四国地方に限られていることは、ダニ生息と関係があるのでしょう。

 夏の時期には、患者の数が増えることが危倶されます。

命を守るにはとにかくダニに刺されない

 SFTSについては、まだ詳細が明らかになっていません。どのような機序で発症するのか、どのような薬が効果的なのかについては今後の解明が待たれます。しかし、前述したように、高い確率で死に至るため、とにかくダニに刺されないように予防することが重要です。

 ダニは自然界に数多く存在します。そのため、今回紹介したようなダニが媒介する病気は、今後もなくなることはありません。できるだけダニがいない環境をつくり、まず室内を清潔にすることです。

 そして、屋外では特に山林に注意してください。ダニに刺されないように、夏でも長袖・長ズボンなどを着用して、肌をできるだけ露出しないように。肌が露出している部分には虫除け剤を塗るなどの対策をとって、気を付けてください。

 特に九州、中国、四国地方の方は、このような対策を心がけることが自らの命を守ることにつながります。

連載「死の真実が"生"を処方する」バックナンバー

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。社会医学系指導医・専門医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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