従来の“縦割り”対応では解決しない
ダブルケアの負担感については、「精神的にしんどい」が81%、続いて「体力的にしんどい」「経済的負担」といった声が寄せられた。さらにダブルケアに直面している人や経験した人に、介護や子育ての支援サービスが十分かどうかと聞いたところ、どちらも80%以上が「不十分」と答えている。
ダブルケアの担い手が特につらいと感じるのは、“たいへんさ”の全体像が理解されにくく、孤立感にさいなまれやすいことだ。あまりに忙しくて、地域の子育てサービスを検討する余裕もなく、ひとりで全て抱え込んでいる人も少なくない。
行政では現状、介護支援者は介護(高齢者)、子育て支援者は子育て(親子)という目配りで、窓口も縦割り的な対応が多い。「これからは垣根を越えて、全体で相談に乗り、必要な情報やサービスにつないでくれたり、コーディネートしてくれたりする窓口や人材が重要」と、研究者らは指摘する。
産官学連携の新たな支援もスタート
昨年、横浜国立大学と市民グループが中心となり、ケアの当事者を支援する任意団体「ダブルケアサポート横浜」が発足した。
クラウドファインディングによる資金を元に、育児と介護の両方に目配りできるサポーターを養成するプログラムを開発。ダブルケアに役立つ情報が詰まった小冊子を作成中で、全国の注目を集めている。
企業も参入を始めている。ソニー生命保険は、横浜市で子育て世代を対象に、ダブルケアも念頭に置いたライフプランニングセミナーを実施。保育サービスや家事支援の業者も動き出す。
横浜信用金庫と日本ユニシスは昨年12月、連携してダブルケアに関する資金計画や新規参入などの相談の試行を開始。約10社が相談を寄せているという。
複数の困難を抱える人が増えている現代、ダブルケアはその複合課題をとらえる一つの切り口になるかもしれない。いずれにしても、領域を超えた複眼的な視点を持つ支援システムの構築が急務だ。
(文=編集部)