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【連載第5回 頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた】

頭痛を誘発する因子の上位5つのうち4つまでがストレスや緊張などの精神的要因

大幅な体重減少でも頭痛が改善

 次に、食事性因子の中で肥満との関係について話します。アメリからの報告(2)ですが、極度の肥満患者さんにおいて、減量手術(食べられる食事の量を減らす手術)が行われています。これにより食べ物の摂取制限し減量しようとする手術です。この手術を受けた患者702人中、片頭痛を持っていた102人について、追跡調査のできた81人中、90%が女性でした。肥満になってから片頭痛を来したグループ51人は手術後に48人が改善しました(41人で頭痛がなくなり、7人も部分的に改善)。
 
 一方、肥満症になる前から片頭痛を来たしていた24人は18人が改善しました(11人で頭痛発作がなくなり、7人が部分的に改善)。このように、どちらのグループも減量手術により、大幅な体重減少を来すことによって、頭痛も改善する報告です。ただし、その効果は、肥満になった後から頭痛持ちの体質になった人の方が、ダイエットによる頭痛発作の改善効果が大きいと考えられると報告しています。食事性因子も強迫観念的な食欲からのストレスと考えることもできるかもしれません。

 では、実際の対策はどのようにすればいいのでしょう。まず自分の頭痛の誘発因子を知ることが重要です。その方法は、第2回でお話した、頭痛ダイアリーをつけることでした。

そこから、自分の誘発因子を知れば、その誘発因子を避ける工夫が重要です。たとえば、眩しい光や太陽の光で頭痛を誘発する人は、外出時は、サングラスをかける事で、ある程度予防することが可能と考えられます。また食事内容や、アルコールなどが誘発因子となる人は、自分でその適量、あるいは、摂取の中止を検討してみてください。さらに天候(特に雨の日や低気圧など)で起こす方もいますが、このような方は、雨の日の外出を控えたり、予め予防薬的な内服薬を検討することも重要です。そして何よりストレスフルな生活環境を見直してみてください。

 このように、頭痛持ち方でも、自分の生活習慣を見直すことで、頭痛の回数を抑制できる可能性があります。これは、頭痛だけでなく心身ともに健康に生きる基盤となるもので日常生活の基本となる食事・睡眠・排泄・清潔・衣服の着脱の5つの生活習慣を一度、振り返ってみてください。この中に頭痛の予防のヒントがあるように思います。

1. Hauge AW, et al.  Cephalalgia 30(3) : 346-353. 2010
2. Gunay Y, et al. Surg Obes Relat Dis. 9(1): 55-62. 2013


連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」バックナンバー

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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