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【連載第5回 頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた】

頭痛を誘発する因子の上位5つのうち4つまでがストレスや緊張などの精神的要因

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頭痛の原因のほとんどがストレスshutterstock.com

 毎日の生活でよく、「会社で頭が痛いことがあるんだよ」などというフレーズを、無意識に使われる人も多いと思います。この「頭が痛い」という言葉の意味する所は、本当に頭が痛いわけではないですよね。辞書で調べると「心配ごとや悩みごとで苦しむこと」「解決できないことや心配事があり、深く悩んでいること」などとあります。

 しかし、この「心配ごとや悩みごとで苦しむこと」も、度を超して強いストレスや心配ことになってくると、実際に頭痛が誘発されることがわかっています。特に、身体的ストレス(食事や睡眠が取れないといったこと)、社会的、精神的ストレス(人間関係、社会関係にまつわること)が、頭痛を引き起こすといった報告があります。慢性頭痛ガイドライン2013でも、おおよそ次のような項目を頭痛誘発因子として挙げています。

①精神的因子:ストレス、精神的緊張、疲れ、睡眠(過不足)
②内因性因子:肥満、月経周期
③環境因子:天候変化、温度差、におい(香水、タバコ)、眩しい光(太陽光)、人ゴミ、飛行機内
④食事性因子:空腹、アルコール、コーヒー、化学調味料、個々による食物

 ここで誘発因子の中で真っ先に上がっている精神的因子についてお話します。これは、ドイツの2010年の報告(1)で、629人の片頭痛患者で実際に頭痛を引き起こした原因のあった278人について4つの因子分野、17項目について詳細な調査をおこないました。

すると、上位5位までの何と4項目が精神的因子であったという報告があります。頭痛誘発因子の個数も1人あたり、3個から6個ぐらい持っている人が多く、10個以上の誘発因子を持っている人も278人中の1割程度いたと報告しています。このように、「病は気から」といいますが、頭痛も気から起こるのかもしれません。

<上位5位の頭痛誘発因子>
1急性ストレス後(PTSDに類似した状態)
2まぶしい光(太陽光)、
3精神的緊張(激しい情動の状態)
4悩み事、身体的疲れ 
5睡眠状態(寝不足、過眠など)

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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