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【連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第25回】

春の「頭痛」は急性ストレス障害、二つの「習慣的な行動」で解消も

新しい環境下では認知行動療法による「習慣的な行動」を

 では、このような新しい環境(新入学、新入社)で楽しく新生活のスタートを切るには、どのような点に注意すればいいのでしょうか。またこのような頭痛の対処法としては、どのようなものがあるでしょうか。

 脳科学、認知行動療法の面からは、簡単でそれほど負担にならない習慣的な行動が自分を変えることができると実証されています。

 認知行動療法とは、メンタルストレスや心の悩みを改善するために、実際に医学の場でも取り入れられている治療法で、物事を捉える視点を、自分の考えだけではなく、さまざまな視点から捉えて治療していきます。今回は1人で簡単に実践できる、以下の2つの「習慣的な行動」をおすすめします。

●自分から自己紹介をしてみましょう。

 新しい学校や職場では、そこに集まってきた人はみな、期待と不安を抱えています。同じ境遇ですから、打ち解けたいと思っている気持ちも共通しています。優しい気持ちで、自分から先手の積極的なあいさつをしてみましょう。

 みなさんから勇気を出して声をかけることが、相手に対しても「ギフト」になると考えると声をかけやすくなるのではないでしょうか。また、自分が声をかけられたら自然に自己紹介ができるように予め準備しておくことも良いでしょう。名前や出身、学校など共通のことがあると早急に仲良くなれるものです。

●「きっと、うまくいく」とイメージしてみましょう。

 インドで製作された、真の友情や幸せを描いたコメディー映画のタイトルにもなっている「きっと、うまくいく」。これにはどんな意味があるのでしょう?

 これからはじめる新しい環境で、「友達ができなかったらどうしょう?」、「仕事がうまくできなかったらどうしよう?」と悪いイメージで考えないということです。「どうしたら友達ができるかな」、「どうしたら仕事がうまく行くだろう」と考えるのです。しかもこの場合、できるだけ具体的な行動につながるように考えるのです。

 認知行動療法では、うつ病や不安障害患者に起きている否定的思考(negative thinking)を無理に肯定的・積極的思考(positive thinking)に転換することは、治療上、重要ではないとされています。しかし、疾患でない人における認知行動心理学では、肯定的思考がコミュニケーションに有効との報告が多くあるのです。

重度のうつ症状の人に「がんばろう」と声をかけることはほとんど意味は無く、むしろマイナスの効果が生じる場合さえあります。しかし、落ち込んでいるレベルの人にそうした元気付けは有効といえば、正確ではありませんがわかりやすいでしょう。

 特に朝起きた時に「今日もきっとうまくいく」と思い描くことです。脳科学でも、朝起きた時や、これから行動する時に行うのか効果的だといわれています。セルフイメージの捉え方次第で、新しい環境は素晴らしいものになるのです。

 今回は、新しい環境と頭痛との関係について二つの「習慣的な行動」をご提案しました。読者のみなさんには、新しいスタートが素晴らしい人生の始まりとなることを心からお祈りして終わりにしたいと思います。

 ただし、頭痛や他の具体的な症状が持続する場合は、専門医療機関への受診をお願いします。

参考文献、注釈)
1)Foiadelli T1 et al. Ital J Pediatr. 2018 Apr 4;44(1):44.
2)Hauge AW1, et al. Cephalalgia. 2010 Mar;30(3):346-53.

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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