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【連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第25回】

春の「頭痛」は急性ストレス障害、二つの「習慣的な行動」で解消も

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春の頭痛を少しでも軽減したい

 4月~5月は、新入学、新入社、転勤など、新しい環境や人間関係の中で始まる生活の期待と不安でいっぱいになる季節です。最近は、入学や入社前から孤独感にさいなまれSNSを利用し、同じ学校や職場の仲間と繋がる傾向があるようです。それだけで問題が解決すればいいのですが、なかなか新しい環境になじめない場合は注意が必要です。

 今回は、そのような春の精神的なストレスから生じる頭痛や体調不良への対処法についてお話します。ちなみに五月病という医学的な診断はないのですが、やはり非常に似ているものだと思います。

頭痛の原因は急性のストレス障害

 学校や職場などの新しい環境になじめないと、それまで抱いていた期待が大きく裏切られ、精神的ダメージが強く、より大きな落胆につながることが容易に想像できます。そのような時に頭痛や腹痛を起こして外出できなくなることがあります。新しいスタートに対してうまく適応(なじむこと)できない、あるいは自分が思ったほどうまく行かない場合に引き起こされる頭痛があります。

 実際に、片頭痛の起きるタイミングを調べたイタリアの論文があるのですが(参考文献1)、約2000人の学生にアンケートしたところ、学校に行っている時の方が、休日より頭痛が起こることが多いと記されています。学校や会社に行くことがストレスとなり感情的な問題となると記載されています。

 また原因を調べた報告では、急性のストレス障害がもっともトリガーとして頻度が高いと報告されています(参考文献2)。その人にとって大きな問題、悩み事があると、だれでも頭痛を起こすという意味ですね。

 しかし、上手に対処しないと、電車に乗ると頭痛、動悸、冷や汗、腹痛など、いろいろな身体症状が出ることで学校や職場に行くことができなくなってしまいます。

 このような場合には「適応障害」と呼ばれる疾患の可能性もあり、精神科やカウンセラーなど専門的な治療が必要です。五月病の原因で一番多い病気はやはり適応障害だといわれています。

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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