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【本能で楽しむ医療ドラマ主義宣言! 第10回】

『アンナチュラル』女医が見た法医学者ミコトの矜持 文書改ざんを拒み真実を追究!

毎日どこかで人が死に、また悲しみが増える

ミコトの心も奥底も見えてきた最終回。
「不条理な死に負けるってことは、私を道連れに死のうとした母に負けるってこと」

 愛する母に道連れにされそうになり、一人取り残されてしまう人の心情なんて、凡人の私には想像もつきません。やはり、簡単には言葉にはできない、深い気持ちが見え隠れしました。

 練炭自殺のサバイバーであるミコトが平常を保って生きていける大きな理由、それは負けないこと、だったんですね。負けそう、とコタツで顔を隠すミコト。

 毎日人がどこかで死んで、誰かが悲しんで、憎んで、また悲しみが増える……。わかる……、すっごくわかる、と思わず共感。

 状況は全く違うけれど、私が日々外来をしている瞬間はまさに一期一会。

「また来週!」とサヨナラした患者さんが突然亡くなってしまい、二度と会えなくなることはしばしばあります。私は在宅もやらないしそれこそ救急は診ないので、患者さんが亡くなったときには後日、その事実を知らされます。

 毎回、「まだ死にたくないから」ともらしていた90代の方が自宅のトイレで吐血して亡くなったと聞けば、苦しかったのかな?、その瞬間は死を覚悟したのかな?と思いをめぐらせてしまいます。

 「明日から入院してくるから、何かあったら妻をよろしく」と言い残し亡くなってしまった方、「井上先生に言わなくちゃいけないことがあるんだよ」と家族に言って、そのまま急変してお亡くなりになった方もいらっしゃいました。後からそういったことを聞くと、言いようのない気持ちに襲われます。

 偶然、悪性腫瘍が見つかり、ご本人とご相談しながら病院を探しご紹介をする。そんなことを毎日繰り返していると、今、私が笑ったこの瞬間も痛がっている方や、途方に暮れている方もいる。

 あの人もこの人もと想い、医師として仕事を続けていくことがきつくなった時期がありました。その時期のことがフラッシュバックしてきてしまったこのコタツのシーン。私に限らず医師には誰しもこういった経験や忘れられない患者様がいるのでしょう。でも、このシーンの石原さとみちゃんの美しい顎のラインも見逃してはおりません。

不安定な世の中でぶれないように生きていくために

 医学の知識を巧みに利用しがむしゃらに真相を探ろうとした中堂が、中和薬を持っていたところを見ると、ミコトの影響なのか少しその暴走気味の行動も変容しているように思われました。そして、法の中でできる限りの知識を絞り出して正解を導く2人の勝利となりました。

「不条理な事件に巻き込まれた人間が、自分の人生を手放して、同じように不条理なことをしてしまったら負けなのではないんですか?」

 不安定な世の中でぶれないように生きていくためには、こんな強い気持ちで負けないように生きていくのも一つの方法なのかもしれませんね。自分とは違ってもいろいろな方法で頑張っている人がいる。なんとなくうれしくなってしまった最終回でした。

 あ、第1回コラムで謎だった<7K>の最後は「嫌いじゃない」でしたね!

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。続編・映画化? 楽しみにお待ちしております!ぜひ続編でミコトをめぐる三角関係ネタ、お願いしたいです!(笑)


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井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長
東京生まれの東京育ち。医科大学卒業・研修後、整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。自他共に認める医療ドラマフリーク。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。
自分の健康法は笑うこと。現在、予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を開いてい。現在は二人の子育てをしながら時間を見つけては医療ドラマウォッチャーに変身し、joynet(ジョイネット)などでも多彩なコラムを執筆する。

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