エナジードリンクが及ぼす「心臓」への負担
心臓も含む循環系の負担も大きいことがわかっている。以前の記事でも紹介したが、短期間での血圧の上昇はすでにいくつかの研究で報告されている。
たとえば、血圧や心臓の収縮力を上昇させ、脳の覚醒を促す作用があるノルアドレナリンを測定した。その結果、エナジードリンクを飲んだ後のノルアドレナリン値の上昇率(74%)は、模造ドリンク(30%)の2倍以上だ。
同じく、エナジードリンクを飲んだ後は、血圧値が平均6.4%上昇したのに対し、模造ドリンクでは1%だった――と過去に報告された【4】。
この報告を含めたエナジードリンクと血圧との関連を研究した15つの論文をまとめた2016年の結果でも、「やはりエナジードリンクを飲むことにより血圧上昇が生じる」と結論づけられている【5】。
エネジードリンク1缶には、コーヒー5杯分ほどのカフェインを含むといわれる。欧州食品安全機構の定義では、「カフェインは1日に400mgを超えるとカフェイン中毒の症状が起こりうる」とされる。
コーヒー1杯のカフェイン量は平均80mg。エナジードリンクを1日に2缶以上飲んでいる人は、特に要注意といえるだろう。
代謝機能、歯への影響、悪循環を引き起こす
エナジードリンクは、カフェイン量の多さだけが注目されがちだが、糖分も多く含まれる。当然、糖分の過剰な摂取にもつながる。
ご存じのとおり、糖分を撮り過ぎれば、2型糖尿病やメタボリックシンドロームなどの代謝異常性の疾患を引き起こすリスクは高まる。口腔内への悪影響としては、虫歯などにもつながりやすい。
また、前述のように、多量カフェインを含むエナジードリンクは、睡眠障害を引き起こす可能性がある。睡眠障害が慢性的な疲労を蓄積させ、さらなる健康被害を引き起こす――という悪循環に陥る。
以上のように、エナジードリンクに関する科学的なデータを客観的に読み解くと、健康という観点からはオススメできないことがわかるだろう。
<エナジー>の名やイメージからは、「身体によい」「活力が沸く」ような印象を抱きやすい。気軽に購入できるエナジードリンクだからこそ、自らが栄養成分表示を確かめてカフェインや糖分の量を把握し、1日の推奨量に留意しすることは、健康被害を防ぐために大事なことだ。
そもそも、<エナジードリンク>という名称が誤解の元かもしれない。将来的には、この名称は再考の余地があるだろう。エナジードリンクに限らず、商品のイメージや印象は操作が可能だ。私たちは<真実>を求め、それをきちんと解釈する心構えや知識が必要である。
(文=三木貴弘)
●参考文献
【1】Al-Shaar, L., Vercammen, K., Lu, C., Richardson, S., Tamez, M., & Mattei, J. (2017). Health Effects and Public Health Concerns of Energy Drink Consumption in the United States: A Mini-Review . Frontiers in Public Health . JOUR . Retrieved from https://www.frontiersin.org/article/10.3389/fpubh.2017.00225
【2】Abian-Vicen J, Puente C, Salinero JJ, González-Millán C, Areces F, Muñoz G, et al. A caffeinated energy drink improves jump performance in adolescent basketball players. Amino Acids (2014) 46(5):1333–41. doi:10.1007/s00726-014-1702-6
【3】Howard MA, Marczinski CA. Acute effects of a glucose energy drink on behavioral control. Exp Clin Psychopharmacol (2010) 18(6):553–61. doi:10.1037/a0021740
【4】Holubcikova J, Kolarcik P, Geckova AM, Reijneveld SA, van Dijk JP. Regular energy drink consumption is associated with the risk of health and behavioural problems in adolescents. Eur J Pediatr (2017) 176:599–605. doi:10.1007/s00431-017-2881-4
【5】Park S, Lee Y, Lee JH. Association between energy drink intake, sleep, stress, and suicidality in Korean adolescents: energy drink use in isolation or in combination with junk food consumption. Nutr J (2016) 15(1):87. doi:10.1186/s12937-016-0204-7