インフルエンザワクチンを毎年接種すると免疫力が高まる
ベルゲン大学(ノルウェー)臨床科学部のRebecca Cox氏らがこうした俗説を打ち破る研究を実施した。
以前より繰り返しワクチンを接種することでウイルスなどに感染した細胞を破壊するキラーT細胞(CD8陽性T細胞)の働きが阻害されることが、動物実験と免疫が低下した小児を対象とする研究で示されていた。
そこで同氏らは、健康な成人でも繰り返しインフルエンザワクチンを接種すると免疫が低下するのかどうか調べたという。Cox氏らによる研究の詳細は「The Journal of Infectious Diseases」3月号に掲載されている。
対象は、2009年にインフルエンザワクチンを接種し、それ以降は接種したことがない医療従事者と、同年以降も毎年ワクチンを接種していた医療従事者の計250人。インフルエンザの流行シーズンが始まる前またはワクチン接種時に採取された血液サンプルを用い、抗体価とキラーT細胞およびヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)の活性を評価した。
その結果、ワクチンを接種した人では接種回数にかかわらずインフルエンザウイルスの感染を予防できるレベルの抗体価が維持されていた。また、接種歴が1回だけの人と比べ、毎年接種していた人ではヘルパーT細胞の活性が高く、ウイルス感染と戦う能力が高いことが示された。
呼吸器専門医である米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏は「毎年予防接種を受けてもウイルスから身を守るもう1つの防御力が失われるわけではないことを示した研究結果であるといえる」と説明。
一方、米ノーザン・ウェストチェスター病院の感染症診療部門に所属するDebra Spicehandler氏も「この研究結果は、毎年インフルエンザワクチンを接種しても、自然免疫は低下しないことを示している」と話している。
日本でのインフルエンザの発生は、毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月にかけて減少していくパターンを示す。
12月にはワクチンの供給も安定化してきた。未接種の場合はやはり接種をするべきだ。
(文=編集部)