中高生の睡眠時間が増えたことで経済効果が!
ランド研究所は、中学や高校の始業時間を午前8時30分以降に遅らせ、中高生の睡眠時間が増えることによる経済的な影響について分析した。
その結果、アメリカ47州の中学や高校の始業時間を午前8時30分以降に遅らせることで得られる経済的な利益は、2年後までに86億ドル(約9288億円)、15年後までに1400億ドル(約15兆1200億円)と推定された。
始業時間の変更に伴いスクールバスの運行スケジュールの調整などに必要な費用は発生するが、期待できる経済効果は大きく、短期間で回収できるとしている。
報告書の著者の1人は「長年にわたって、私たちは10代の子どもたちの睡眠の問題について公衆衛生上の課題として議論してきた。しかし、経済的な側面でも、この問題は極めて重要であることがわかった」と説明している。
平均睡眠時間の1時間アップで卒業率と進学率が上昇
過去の研究では、平均睡眠時間が1時間長くなると、高校の卒業率が13.3%、大学への進学率が9.6%上昇すると推定されている。こうしたことは学生が就く職業や収入などにも影響を与える。
加えて、自動車事故による死亡例の20%が運転手の睡眠不足や疲労に起因していたとするデータもあることから、ランド研究所は「若年者の自動車事故は、労働市場や経済にも影響を与える」と付け加えている。
米国小児科学会によれば、思春期は人生で最も体内時計が夜型化する年代で、午後11時よりも前に寝て、午前8時よりも前に目覚めるのは難しいそうだ。
我が家も子どもが中高生になったら、朝寝坊を「だらしない」「怠け者」と非難するより、体の仕組みだからと温かい目で見守るようにしよう――。
とはいえ、子どもたちが夜更かししたり、スマホやゲームで夜間にブルーライトを浴びたりすることは、親として断固許さないのだが。
(文=森真希)
森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。