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【連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」第18回】

ストレッチで「ぎっくり腰」に! 静的ストレッチで筋肉をゆるめた結果……

静的ストレッチで反応できなくなり腰痛に!?

 

 重い負荷を持ち上げる時でも事前に準備ができていれば、ぎっくり腰にはなる可能性は低い。だが、予期せぬ何でもない動作でぎっくり腰を生じさせてしまう人は少なくない。腰を痛める要因は、重さや負荷ではなく、瞬間的に無意識のレベルで反応できるかどうかだ。

 たとえば、空港の手荷物受取所で、スーツケースに「heavy(重い)」というシールを貼られることがある。こうすれば荷物を運ぶ作業員が、その荷物が「重い」ということを事前に認識できる。このようにして作業員の腰痛を防いでいるのだ。

 くしゃみや咳をした瞬間、朝の洗顔をしていときに……ぎっくり腰になって動けなくなった――。という話を聞いたことがあるだろう。くしゃみや咳は、瞬間的にお腹にかなりの力が入る。この急激な筋肉の収縮ができないのが原因だ。
 
 朝の洗顔は、起床後で筋肉の血流が悪くなっているときに、前かがみ姿勢をとることで腰への負荷が増強される。実はぎっくり腰になる<魔の時間帯>。何気ない日常の動作だから、無意識でかかる負担に筋肉が反応できないのだ。

 腰を動かす直前には、筋肉が自動的に反応して腰部を守っている。ところが、腰部の筋肉の機能が弱っていると、瞬間的に反応できず、刺激がそのまま腰に伝わり、ぎっくり腰になってしまう場合が多い。

 静的ストレッチをじっくり行って筋肉を伸ばしきってしまうと、瞬間的な反応が出にくくなるので、ぎっくり腰になる可能性を高めてしまう。一日の終わりに疲れをとるためにストレッチを行なうことは、良い習慣かもしれないが。

 体をゆるめれば良い、柔らかければ良いというわけではなく、必要に応じて身体を変化できることが腰痛を防ぐコツだ。


 
連載「国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」バックナンバー

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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