私が死んだらこの子たちはどうなる?(shutterstock.com)
一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2015年10月現在、全国の犬の飼育数は約991万7000頭、猫の飼育数は約987万4000頭と推計される。飼い主の年代は犬・猫ともに50~60代が多く、犬の平均寿命は14.85歳、猫は15.75歳だ。
この数字を見るに、高齢者世帯でペットが飼われている割合が高く、その分、飼い主よりもペットのほうが長生きする可能性も高いといえる。
では、ペットより先に飼い主が死んでしまったとき、遺された愛犬や愛猫はどうなってしまうのか? 自分の死後、大事な家族を守る方法はあるだろうか?
最良の方法は“託す相手”を見つけること
ペットの行く末を案じたとき最良の方法は、生前に信頼できる相手に世話を依頼することだ。そのためには、普段からペットと面識をもってもらい、好きな食事や遊び、持病の有無や気をつけてほしい点などを知らせておく。
口頭だけでなく、ノートなどにまとめてもいい。そのようにして飼い主に何事かあった際には、スムーズに引き渡しができるよう手配しておくのだ。
託す相手は、家族や親族を筆頭に、友人、ペット仲間、懇意にしている動物病院などが候補に挙がるだろう。高齢の犬や猫なら老犬・老猫ホーム、NPO団体や一部のペットショップなどが引き受けてくれたり、一時的に預かってくれる場合もある。
いずれにせよ、新しい飼い主が託すに足る愛情と環境をもっているかを見極めが肝心だ。そして、のちのち揉めることのないよう文書化しておくのが良いだろう。いわゆる「遺言書」だ。
故人の「遺産」であるペットについて遺言書に記載する方法
「遺言書」とは大げさに聞こえるかもしれないが、「故人の希望を伝える書面」と考えればいい。
飼い主が死亡した場合、そのペットは「遺産」のひとつとして数えられる。ペットは生き物とはいえ、法律では「人以外=物」として扱われる。
そのため、ペットが故人の遺産を相続することはできない。ペットは「譲渡」の対象となり、遺言書に記載することによって「遺贈」として引き取られるのだ。
言うまでもなく、ペットの世話には手間もお金もかかる。その生涯の負担を考えるならば、相応の金額を遺産として譲るかわりにペットの飼育義務を負ってもらう「負担付遺贈」という方法がいいだろう。引き取り手は遺言が執行されたときに、指定された遺産を受け取ることになる。
その後に続くペットの世話がきちんとなされるかどうか、それを判断するために「遺言執行者」も選任しておこう。遺言執行者は、引き取り手がきちんとペットの世話をしているか確認し、それが履行されていないときには家庭裁判所に遺言の取り消しを請求することもできる。
これら遺言の形式で注意しなければならないのは、いずれも「遺言者の一方的な意思」として扱われる点だ。文書はあっても、引き取り手が拒否してしまえば、なんの強制力もない。
きちんとした約束事として遺贈をしようとするなら、生前に飼い主と引き取り手の双方合意を得て行う「負担付死因贈与契約」を結べばいい。こちらは「契約」であるから、飼い主の死後、引き取り手からの一方的な放棄はできない。
また、一部でも負担(ペットの世話)が履行された場合は、原則契約取り消しも不可能だ。もちろん、契約の執行者も指名できるから、遺言より確実に“死後の安心”は確保できる。
同様に、飼い主が生きているうちに財産もペットを譲る「生前贈与契約」もある。長期入院などペットの世話ができなくなってしまったときには検討できるだろう。