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【連載「Universal Jintai Japan(UJJ)=人体迷宮の旅」第3回】

【閲覧注意】結合双生児、頭から角の生えた女性の顔面標本まで「ムター・ミュージアム③」

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さまざまな結合双生児の人体標本 画像はモザイク加工をしたもの

 ムター・ミュージアムといえば、なんといっても有名なのが結合双生児、シャムの双子とも呼ばれる奇形児コレクションである。

 その語源は、腹部で連結した双生児チェン&エン・ブンカー兄弟の出生地がシャム(タイ王国の旧名)であったことによる。チェン&エンは、胸の部分が小さな軟骨で結合しており、肝臓を共有していた。現在の医学を持ってすれば分離可能といわれるが、19世紀の医学では無茶な分離手術は死を意味していた。そのため、彼らは生涯結合したままであった。

62歳まで生きた双生児のチェン&エン兄弟

 1811年、チェン&エンはタイに生まれた。1829年にイギリス人に発見されて引き取られ、サーカスの見世物として欧米を旅することになる。1839年にはサーカスを引退し、ノースカロライナで農場を営み、アメリカ市民権を取得。2人して姉妹と結婚し、チェンが11人、エンが10人もの子供を作った。そして1874年、チェンが気管支炎で亡くなると、数時間後にエンも息を引き取っている。

 その死後、すぐに遺体はフィラデルフィアに運ばれ、現在、ミュージアムで見ることができる石膏の標本となった。それは死後に型取りされたもので、胸の接続部がよくわかるようになっている。

 ミュージアムには、チェン&エン以外にも、頭がひとつで体が二つ、頭が二つで体がひとつ、あるいは下半身が完全に結合してしまっているものなど、様々な結合双生児の標本が揃っている。ほとんどのシャムの双子は、出産後すぐに死んでしまうという。それからすれば、62歳まで生きたチェン&エンは、医学史に残る貴重な実例なのである。

 ムター・ミュージアムは、数々の病気の症例が、ワックス標本として多数展示されている。目の病気については、100個もの症例サンプルが精巧模型に再現されていたりする。重症な皮膚病、さらにその完治した姿まで標本化されているほどである。

頭部が湾曲した女性の顔面標本、アメリカ大統領の下顎、リンカーン暗殺の脊髄

ケロッピー前田(けろっぴー・まえだ)

身体改造ジャーナリスト。1965年、東京生まれ。千葉大学工学部卒後、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランスに。世界のアンダーグラウンドカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、ハッカー、現代アート、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。著書『今を生き抜くための70年代オカルト』 (光文社新書) が話題に。近著に『CRAZY TRIP 今を生き抜くための“最果て"世界の旅』(三才ブックス)がある。

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